毎週月曜日更新

毎週月曜日更新

タグ一覧

人食いバクテリア 短時間で悪化する喉の痛みと発熱にご注意を!

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

命を脅かす危険な感染症であり、人食いバクテリアとも呼ばれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症(劇症型溶レン菌感染症)が流行中です。1999年の統計開始以降、2024年6月時点ですでに最多を記録しています。保育園や小学校などの子どもが集団生活をする施設では聞き馴染みのある「溶連菌感染症」ですが、劇症型とはどのような状態を指すのでしょうか。今回は、マンションで生活する上での注意点も併せて解説します。

目次
1. 溶連菌が原因 別名「人食いバクテリア症」 劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
2. A群連鎖球菌感染症と劇症型溶レン菌感染症との違いとは
3. A群溶連菌感染症と劇症型溶レン菌感染症の対処と予防
4. マンション内での予防対策

溶連菌が原因 別名「人食いバクテリア症」 劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

ひとたび発症すると短時間で命を落とす危険があるといわれている「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の主な原因菌は、小児期に多い咽頭炎やとびひなどで有名な「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」です。実はこの溶連菌そのものは、人体に存在する日常にありふれた常在菌のひとつです。
劇症型溶レン菌感染症では、この溶連菌が皮膚損傷や粘膜などのバリア機能が低下した部位より侵入し、通常よりもさらに深部にある組織や筋肉・血流を通って全身にまで広がります。

30代以降の発症率が高く、風邪の症状と変わらない発熱や倦怠感などから自覚することが多いため、最初から劇症型溶レン菌感染症を疑うのは難しいとされています。
経過としては、腕や足などの皮膚や筋肉、粘膜や傷などに壊死性炎症を引き起こし、局所的または全身的に痛みが出現します。その後、24時間以内に急激に進行し、意識障害や血圧低下、敗血症などショック症状に陥ります。

発症したら、入院管理での治療が必要です。すみやかにペニシリン(抗生物質)を投与し、外科的に感染組織を取り除きます。そのほかにもショック症状に対する対症療法として、大量の輸液と昇圧剤の投与が行われます。致死率は30%と予後も不安な疾患のため、「人喰いバクテリア」と恐ろしい呼び名で称されています。

なぜこれほどまでに劇症型の感染者が増加しているのでしょうか。小児がよく発症する溶連菌感染症患者が増えていることも、劇症型患者の増加のひとつとして挙げられます。冒頭でも述べた通り、通常の溶連菌感染と劇症型は同じ原因菌ですが、レンサ球菌に感染した際に咽頭炎や皮膚症状にとどまらず、何らかの原因によってまれに劇症型を発症するとみられています。以上から、溶連菌感染症の増加と比例して、劇症型も増えていると考えられているのです。これを受けて、東京都では医療従事者向けのマニュアルを2023年に改定し、感染経路に飛まつ感染を追加しました。

A群連鎖球菌感染症と劇症型溶レン菌感染症との違いとは

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

それでは、いわゆる溶連菌と呼ばれる「A群溶連菌感染症」と、劇症型の違いをみていきましょう。

その違いは、発症年代と症状にあります。A群溶連菌感染症は、飛沫や接触などによって鼻や喉の粘膜から入り込み、2〜5日の潜伏期間後に突然の発熱や強い喉の痛み(急性咽頭炎)を起こすのが特徴です。また、赤い発疹や、舌に赤いブツブツが現れる苺舌など、川崎病に類似した症状が出現します。発症年代のピークは5歳から10歳となっており、成人よりも小児期に流行する疾患とされています。
マンションで気をつけたいポイントは、エレベーターのボタンやドアノブ・手すりなどの共用部に付着した細菌を、手指を介して口や鼻に入ってしまうケースです。このような接触感染のほかにも咳やくしゃみを介した飛まつ感染も感染経路となることから、学校や家庭などの集団生活の場では感染が増え、兄弟間の感染率は25%と報告されています。
治療は劇症型と同じくペニシリン系の抗生物質を投与することですが、ほとんどの場合は通院し、内服で治療できます。

A群溶連菌感染症と劇症型溶レン菌感染症の対処と予防

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

ここではA群溶連菌感染症および、劇症型溶レン菌感染症の対処と予防策についてご紹介します。正しく理解して、感染対策に取り組みましょう。

●対処
感染初期は風邪の症状と大差なく感じることもありますが、急な発熱に加え、身体の痛みや傷口の熱感などの感染徴候などが同時に起きたら、劇症型溶レン菌感染症の疑いがあります。劇症型は進行が速いため、これらの感染兆候が同時に起きた場合は迷わず病院を受診してください。家庭内でA群溶連菌感染症の発症があれば、なおさら早急な対応が必要です。なかでも、妊婦や高齢者など免疫力が低くなっている方や糖尿病などの基礎疾患がある方はハイリスク群となるので、特に急性増悪しやすいため注意が必要です。

●予防
溶連菌は常在菌であるため感染経路が不明な場合が多く、また、感染力が強いため一度かかっても何度でも罹患します。 劇症型の感染経路に関しては傷口からの感染が多く、軽微な傷やささくれ、あかぎれ、水虫(足白癬)や靴擦れ、床ずれなどもしっかりケアして清潔を保つことが対策のひとつとなります。

マンション内での予防対策

マンション内での予防策として、標準的な予防策でもある手洗いやうがい、マスクの着用はもちろんですが、接触感染を予防する点からも共用部の消毒や清掃を常日頃から行うことが大切です。
溶連菌はアルコール消毒が有効な細菌です。不特定多数が触る共用部であるマンション入口や自動ドアのタッチセンサー、エレベーターのボタン、郵便受け、宅配ボックスなどをアルコール消毒し、清潔を保ちましょう。

さらに、掲示板などで注意喚起することも感染拡大の予防になります。
溶連菌感染症は学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されており、「適正な抗菌剤治療開始後24時間を経て、全身状態が良ければ登校可能となる疾患です。集団生活を行う方は、軽い症状でも放置せずしっかりと治療することが感染拡大の予防につながります。そのため、溶連菌への注意喚起、咳エチケットや手洗いの励行、局所的な腫れや痛みを伴う急激な発熱が起きた場合は速やかに受診するよう、ポスターなどを作成して管理組合から呼び掛けるとよいでしょう。

劇症型ではない感染者から感染しても、症状の出方は人によって異なるため、劇症化する可能性もあるといわれています。多くの世帯が共に過ごすマンションでは、より一層の注意が必要です。
マンションでは多様な世代が暮らしていますが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子育て世代の30代頃から高齢者までの幅広い世代が罹りやすいとされています。人喰いバクテリアと呼ばれるほど進行が速い疾患であり、重症化しやすく、死亡リスクも高い感染症です。症状や対処、予防方法についてしっかり理解しておくことが重要です。

■あわせてお読みください。
ダニに刺された! イエダニに刺された跡の特徴とマンションでの駆除方法
鳩のフンは病気の原因に! フン害を防ぐためのベランダ鳩対策
新型コロナウイルス マンション内で感染者が出てしまったらすること


■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2024年7月22日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

おすすめコンテンツ