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災害発生時に必要となる住人の自助と共助。あなたのマンションは大丈夫ですか?

マンション災害

1. 被災時に最も重要となる自助と共助の備えとは

住まいの防災力を考える時、基本となるのは住人の命を守るための建物の強度です。次に重要となるのが、実際に災害が起きた時に可能な限り安全かつ速やかに避難ができるよう、備えをしておくことです。近年、各地で起きた地震などの災害で自宅の倒壊は免れても、しばらくは水道・ガス・電気が使えない、食料や日用品などの物資が届かない、といったケースが相次いでいます。

集合住宅であるマンションで、もしそのような事態になった場合、元の生活に戻れるまでの期間を無事に過ごすためには、住人による自助と共助が欠かせません。災害が起きた後、安全な避難生活ができるよう何を備えれば良いか、被災直後と被災後数日間の2段階に分けて考えます。
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2. 共助の備えでスムーズな避難が可能に

災害が起きた直後は、まず安全確認をし、必要に応じて避難することになりますが、地震の場合は玄関ドアが変形し開かない可能性もあります。
マンションの各専有部では外への脱出口が玄関かベランダに限られることも多くあり、スムーズな避難のためには、避難用子扉付玄関ドアへの改修や、歪みにくい耐震丁番などの取り付けなどにより脱出口を確保することが大切です。

ここで注意しておきたいのが、玄関ドアの外側は共用部であるということです。そのため、このような改修については管理規約の確認や他住民の合意が必要になります。
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また、このほかの共用部の備えについても見ていきましょう。
超高層マンションなどは共用廊下が内廊下になっていて、非常階段は無窓のものが多いのが現状です。誘導灯で長くても60分程度、非常灯で30分程度が法令で定められた点灯時間なので、災害時に長時間停電すると昼間でも暗く避難が困難になることが考えられます。このようなケースはもちろん、高層でなくても夜間の避難がしやすいようにするには、蓄光式誘導標識や停電時避難誘導システムが有効です。加えて、障害のある方の避難やけが人搬送のための階段用搬送器具があれば心強いですね。

さらに、マンションは火災に強いコンクリート造ですが、家財や内装材などについては木造の戸建住宅と同様なので、火災対策も忘れてはいけません。内廊下式のマンションでは防火扉の開閉をさまたげる物を置かないことが必須です。
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3. 被災後、自宅での生活に向けた共助による対策は

次に、被災後およそ1週間程度、マンションで生活を続けるために住民の共助によってできる対策を紹介します。
大規模災害ではマンションの電源が失われる可能性が高く、そのような場合、各世帯への給水もできなくなります。まずは受水槽に緊急遮断弁を設置して非常用水を確保し、発電機と水の汲み上げポンプを準備しておくことが重要です。また、ろ過装置を設置し、近くの河川や共用施設のプールなどの水をろ過して利用する方法もあります。マンションによっては防災井戸が設置されている事例もありますが、これは今後の普及が望まれます。
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マンションの電源がダウンするとエレベーターも止まり、高齢者や障害者・6階以上の居住者にとっては、外出や荷物の運搬に大きな支障となります。そこで、荷揚げのためのホイストクレーンや発電機・荷揚げバケツなどの機材の選定や導入が大事になります。
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さらに、共用部に、高齢者や高層階居住者の待機所・応急処置室・防災倉庫などの設置をしたり増改築を進めているマンションもあります。
防災倉庫の設置や増築は、建築基準法による建蔽率と容積率の参入対象(除外措置等あり)となるため、注意を要しますが、利用頻度の低い共用施設を防災倉庫に転用するなどの手段も考えられます。このほかにも、エクステリアの改修時に防災トイレや炊き出し用のかまどに転用できるベンチを設置するなどして、防災力を向上させる事例が増えています。

4. 被災後は住民の自助による備えが必要に

以上は、住民の合意や協力によるもので、いわば共助になります。加えて、マンション住民の自助による備えとしては、何をすれば良いでしょうか?
まず、住民として行うべき基本の対策として、被災直後の避難を妨げないようにベランダの避難用ハッチをウッドデッキなどでふさがないようにします。また、専有部内の火災を防ぐために、初期消火用の小型消火器を備えるとともに、震災による通電火災を防止する簡易の感震遮断機器を設置することが重要です。
機械式の駐車設備のあるマンションでは、入庫してある車は数日〜1週間程度出庫することができず、帰着した車両がマンション敷地にあふれることが予想されます。
緊急車両等の通行の為、キーを付けておくか、連絡先電話番号などを表示しておく対策も必要になります。
被災後数日間の備えとしては、以前は3日分の水や食料の備蓄が推奨されていましたが、巨大地震に備え、現在では内閣府により1週間の備蓄が提言されるようになりました。

共用部・施設の防災力向上のための工事は、積立金による通常の大規模修繕とは異なり、住民の合意形成にむずかしい面があります。しかしながら、マンションの防災力は安全・安心はもとより、マンションの資産価値にも関わります。
自治体や防災関連団体等ではマンションの防災力評価や診断を行っているところもあるようなので、自分のマンションの防災力を確認してみることも良いかもしれません。
公的助成金の活用なども視野に入れ、検討したいものです。


東京大学生産技術研究所 目黒研究室 平成30年3月 報告書 抜粋

特別研究会(RC-77)防災ビジネス市場の体系化に関する研究会 第8章

建装工業株式会社 マンション防災力の向上実例 リライト掲載


《この記事のライター》
舘林 匠
北海道出身 飛行機の整備士を目指し、日本航空学園千歳校を卒業後なぜか建築の道へ。
一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士、宅建士をはじめ25の資格を有し、
バイク、ダイビング、DIY、料理など多趣味でちょっと飽きやすい性格。
最近はドローンにはまりプライベート機を3機保有している。
KENSO Magazine編集長 兼 ライター

(2018年10月15日記事更新)

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