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タワーマンションの大規模修繕 技術課題を解決するドローンの可能性

タワーマンション大規模修繕

1. 期待されるドローンの活用



小型無人機とも呼ばれるドローンの利用は、空撮や農業をはじめ、災害対応やインフラの分野などにおいても活発化しています。特にインフラの維持管理を含む検査の市場は、2022年には農業の分野を抜いてドローン最大の市場になると予想されています。老朽化が進むインフラ設備が増える一方で、その検査をになう技術者の高齢化や不足が問題となっていますが、ドローンを活用することにより、こうした課題が解消されることが期待されているのです。

建設業界でも、国土交通省の後押しにより、ドローンを活用して生産性向上を目指す取り組みが進められており、現在、建築の分野では、新築の宅地造成のための計算や進捗確認、工事記録などで活用されています。また、建築のさまざまな業務で、ドローンを駆使できる人材の育成や技術支援などの事業も開始されています。

このように、建築でもドローン活用の取り組みが進んではいますが、人口密集地のマンション改修などでの利用については、安全をはじめとする課題もあります。そこで、課題への対応を含め、今後のマンション改修におけるドローン活用の可能性についてお話ししたいと思います。

2. マンションでの運用にあたっての課題

例えば、タワーマンションの大規模修繕の調査などに高性能カメラを搭載したドローンを使うことができれば、足場組み立てなどの仮設物にかかる費用を大きく節約できます。一方で、実際の運用にあたっては、安全性やプライバシーへの配慮なども気になります。マンション改修でのドローン運用にあたり、具体的にどのような課題があるのか、またその対策についてまとめました。

ドローンを安定して安全に飛行させるために
・風に流されず定位置で飛行できるよう、人工衛星により制御されています。また、バッテリー残量が少なくなってきたり、操縦器との通信が途絶えたりした場合は自動的に飛行開始位置に戻る機能が搭載されています。

・加速度計、ジャイロ、気圧高度計などの各種センサー類で安定して飛行できるよう制御し、視覚センサーや赤外線センサーなどが衝突リスクを軽減します。また、操縦アプリケーションなどにより自動飛行の安全性の向上を図っています。

・各種損害保険会社のドローン関連の保険も充実してきました。墜落リスクなどを考えると、1〜5億円の損害賠償保険に加入している機体の利用が望ましいでしょう。

その他の課題について
・現状のドローン操縦のための無線周波数は非常に混雑した帯域で、無線切断リスクも高いため、総務省がドローン専用の帯域による運用を検討しています。

・雨などの天候状況、ビル風、バードストライク(鳥と衝突する事故)などの外的要因への対策も必要となります。

・以上のような、機体自体に対する対策や外的要因に加え、操縦者には、マンションの立地環境や物件の特性に配慮した操縦スキルが求められます。国によるライセンスの制定やマンション改修現場に特化したスキルを学べる体制作りも必要です。

・マンションでの運用においては、居住者のプライバシーへの配慮が欠かせません。現在は、総務省によるガイドラインなどを基にした対策がとられています。
タワーマンション大規模修繕

3. ドローン活用、今後への期待

マンション改修ですでにドローンが活用されている事例としては、大規模修繕工事などに向けての事前調査があります。
この調査では、足場架設前の専用庭・バルコニーの状況確認や、赤外線カメラを搭載することで、高所や狭小地など従来では調査がむずかしかった部分の外壁の劣化具合の調査ができます。マンション屋上の太陽光パネルの状況確認や、足場を設置せずに点検を行うことも可能です。
タワーマンション大規模修繕
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このような活用方法は、足場やゴンドラ架設にかかわるコスト削減につながり、特に、タワーマンションの大規模修繕においては、工期や費用に関して大きなメリットがあります。加えて、災害により被災した場合には、建物や設備の被害や周囲の状況、室内被災者の捜索・安否確認にも活用でき、マンション防災の強い味方になるでしょう。

マンション改修でのドローン活用は、まだ始まったばかりです。今後に向け、機体の性能の向上や法整備を含め、上述の課題への対策が進めば、ドローン活用によってマンションの改修工事や点検作業の効率化が期待できます。


《この記事のライター》
舘林 匠
北海道出身 飛行機の整備士を目指し、日本航空学園千歳校を卒業後なぜか建築の道へ。
一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士、宅建士をはじめ25の資格を有し、
バイク、ダイビング、DIY、料理など多趣味でちょっと飽きやすい性格。
最近はドローンにはまりプライベート機を3機保有している。
KENSO Magazine編集長 兼 ライター

(2019年2月1日記事更新)

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