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タワーマンションの大規模修繕 日本初の超高層 給・排水設備工事 ベル・パークシティ画地IIG棟

マンション大規模修繕

1. タワーマンション大規模修繕工事のポイントは?



1970年代に初めて建てられるようになったタワーマンションは、2000年前後から新築件数が増加し続けています。ここ数年の間に、多くのタワーマンションが大規模修繕工事の時期を迎えます。マンションの大規模修繕工事では、給排水設備の改修や更新も要点の一つといえますが、特にタワーマンションの場合は大がかりで複雑な工事になります。

タワーマンションにお住まいの方であれば気になるところですね。そこで、こうした設備の改修工事の中から、高く評価された直近の施工例をご紹介します。

2. 高い評価を得たタワーマンション排水管更新工事

1987年に竣工した超高層マンション「ベル・パークシティ画地」では、2016年10月から翌年9月にかけ、高さ100メートルを超える分譲マンションとして国内初の排水管更新工事が行われました。これに先立ち、同マンションは同様に国内初となった給水管の更新工事を2013年に済ませています。 今回の改修工事は難易度の高い工事となり、さまざまな工夫がなされました。その取り組みは、一般社団法人マンション計画修繕施工協会(MKS.A)による第8回マンションクリエイティブリフォーム賞を受賞するなど、高く評価されています。次のような取り組み事例が高評価を得ました。
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<ECI方式による発注>
ECI方式は、Early(早い) Contractor(請負人) Involvment(関与)の略称です。大規模な建築工事では、設計業務と施工業務は別々に発注されることが多いですが、ECI方式はこれと異なり、設計の段階から施工会社が参加します。「技術協力・施工タイプ」とも呼ばれ、民間分譲マンションでの採用は全国初と思われますが、今後、難易度の高いタワーマンションの大規模修繕工事などでの採用が期待されます。
今回は調査・設計段階から施工会社が関与し、工事品質を確保しながら、数々の技術提案や住民の負担軽減につながる対策をしています。例えば、排水管の口径を大きくできないため、実験施設を利用した排水システム実験を行い検証ました。排水負荷流量計算にもとづき、検証用タワーに配管を接続して排水テストを実施することで、排水システム全体を見直し竣工時からの不具合を解消できました。
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<住民にやさしい仮設・施工方法の選定>
無騒音の鋳鉄管カッターや油圧ジャッキを使用し、低騒音の工事を実現しました。
また、同マンションでは、排水管が1階の天井内で屈折し汚水ピットへ接続しています。こうした場合、部分的な足場や仮設移動式足場を設置し天井解体作業と配管更新を行うのが一般的ですが、今回は作業用フロアを兼ねた仮天井を造作しました。
これにより、作業のためのフロアが新たに設けられるため、普段どおりの住民の動線を確保できます。さらに、ポリカーボネートの波板をエントランス側から作業用フロア外部へ勾配をつけて造作し受け皿とすることで、工事中の不慮の汚水排水(うっかり排水)によるエントランスの汚損事故を防ぎました。
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<フロア単位の工区割りによる工事の最適化>
同マンションは独特な平面形状に加え、奇数階の階段からのみアクセスできる偶数階のメゾネット形式住居、またその逆パターンの奇数階のメゾネット型式住居を含むなど、非常に複雑な構造になっています。そのため、排水システムは縦方向に複雑に入り組んでいます。さらに、資材搬入や作業員の移動に使用できるエレベーターは1台に限られていました。

超高層建築の特殊性とこのような条件を考慮し、縦系統を一括して施工する従来の工程ではなく、タクト工法により施工にあたりました。これは、排水系統と住戸の関係をあらわした綿密なマトリクス表を元に、内装解体から抜管・管更新を経て内装復旧に至るまでの一連の工程を、最も効率よく作業できる工区を設定して施工管理するという方法です。

これにより6フロアを1ブロック(単位)として施工したところ、排水制限のトータル日数は増えたものの、従来方式の工事よりも住民の負担を減らすことができました。従来の方式では、住戸によっては最大15日間連続して排水が規制されますが、この方式では同じ回数ながら10日に1、2回程度の排水規制に抑えられています。

また、不慮の汚水排水(うっかり排水)対策や、工事工程の最適化、作業員の移動範囲と工事担当者の施工管理範囲の固定化により、施工管理も非常に効率よく行えました。
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この他にも、今回の工事では次のような取り組みが行われています。

・施工仕様の変更提案

・内装オプション工事提案の見える化
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・電子掲示板の活用
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・施工管理におけるタブレット端末の活用
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・給水・排水更新工事事例の展開による社会貢献
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・補助金の活用

・BIM(コンピュータによる建物に関する情報の一元管理)の活用
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今回の工事では、以上のように多くの先進的な取り組みを採用できました。これも、ECI方式による恩恵といえるでしょう。お住まいのマンションの給排水設備改修工事の際に参考にしていただければと思います。


《この記事のライター》
舘林 匠
北海道出身 飛行機の整備士を目指し、日本航空学園千歳校を卒業後なぜか建築の道へ。
一級建築施工管理技士、一級土木施工管理技士、宅建士をはじめ25の資格を有し、
バイク、ダイビング、DIY、料理など多趣味でちょっと飽きやすい性格。
最近はドローンにはまりプライベート機を3機保有している。
KENSO Magazine編集長 兼 ライター

(2019年2月1日記事更新)

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