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マンションの空き家問題 管理組合はどう対応すればいい?

マンション 空き家問題

1. マンションでも起きる? 空き家問題

人口減少にともない、各地で空き家が増えています。長期間にわたって放置された空き家は近隣の環境悪化や資産価値の低下を招くなど、地域のコミュニティにとって様々な問題となります。これは、戸建住宅に限ったことではありません。分譲マンションでも空き家は深刻で厄介な問題につながることがあります。マンションで空き家が増えると、どのような問題が起きる可能性があるのか、また、マンションの管理組合としては、それらにどう対応していけばよいか考えます。

2. マンションで空き家が引き起こす深刻な問題とは

空き家は放置される期間が長いほど、問題も大きくなります。では、なぜ放置されるのでしょうか? それは、所有者が不明などでコミュニケーションが取れないからです。その理由の多くは、本来の所有者が亡くなったあと、相続人が相続を放棄していたり、複数の相続人の間で管理や処分について合意ができなかったりといったことです。そのため、やむなく放置されている空き家が多いと考えられます。「住む人がいない家は荒れる」といわれますが、これは戸建住宅もマンションも同じです。
マンションの場合、戸建住宅と違い、空き家になっても通行人にゴミを投げ入れられるようなことはまずないでしょうが、人が住まないことで設備の劣化は早まります。マンションでは躯体や給排水管を共有しているため、空き家の設備の不具合に気付かず放置してしまうと、他の住戸や共用部に影響することがあります。例えば、空き家になっている部屋の給排水管が劣化すれば、階下の住戸や共用部に水漏れの被害が起き、高額な修繕費がかかる可能性があります。空き家が増えれば、こうした被害も増えることが予想され、その修繕費を誰が負担するのかということも問題になるでしょう。
また、空き家の所有者は管理費や修繕積立金を滞納しているケースも多いようですが、そもそも所有者と連絡が取れなければ催促することもできません。そのような所有者不明の空き家が増えれば、管理費や修繕積立金が不足する恐れがあります。
さらに、大規模修繕工事費を融資で賄おうとする場合は注意が必要です。公的金融機関では、資金の貸し出しを行う際、修繕積立金の滞納割合が徴収額の10%以下であることを条件にしています。将来、全国的にマンションの空き家率は増加し続けるといわれていますが、実際にそうなったマンションでは修繕資金を借入れすることができなくなります。
マンション 空き家問題

3. マンション管理組合がやるべき空き家対策

このように、分譲マンションの空き家を放置していると、建物自体の老朽化を早め、管理や修繕のための資金不足といった深刻な事態を引き起こす可能性があるのです。管理費が不足すると、日常的な維持管理が困難となり、管理組合の活動にも支障が生じます。その上、老朽化した建物を修繕しようとしても資金が足りず、融資も受けられない――これでは、快適に暮らすことはできませんし、資産価値も低下してしまいます。
こういった深刻な事態を回避するためには、「所有者不明」の空き住戸をなくすことが基本となります。どんなマンションでも、ある程度の空き家が発生することは避けられません。しかし、所有者がわかっていれば、少なくとも管理費や修繕積立金の滞納を防ぎ、専有部分内に不具合がないかチェックをお願いすることはできるでしょう。
そのために、マンション管理組合と管理会社ですべての区分所有者を把握しておくことは不可欠です。そして、空き家の所有者がわからなくなる原因として多いのが相続です。そこでおすすめなのが、万一のケースに備えて近隣に住む親族など、所有者本人以外の緊急連絡先も含めてリスト化することです。これは個人情報に関わるデリケートなものですが、居住環境と資産価値を守っていくためには必要なことですので、マンション管理組合として各住民に理解を求めていきたいところです。一方、各住戸の所有者も、管理組合まかせにするのではなく、将来の退出や相続などの可能性と、それに向けた備えをしておくことが重要でしょう。

《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年10月1日記事更新)

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