毎週月曜日更新

マンションの大規模修繕工事が始まると、一般的には現場代理人が現場に常駐します。現場代理人は工事のスムーズな進行や工事中の住民対応に大きく関わります。最近では、管理組合が主催するヒアリングにおいて、工事業者を選定するポイントとして、現場代理人の資質を判定し、工事業者を選定することも増えているようです。それでは、現場代理人は、具体的にどのような仕事をしているのでしょうか？
今回は大規模修繕工事における現場代理人の仕事について説明します。

目次
1. 現場代理人とは？ その仕事は？
2. 似ているけど違う主任技術者・監理技術者とは？ その仕事は？
3. 現場代理人と監理（主任）技術者の違い
4. 現場代理人は工事中の住民とのコミュニケーションの窓口

現場代理人とは、工事を請け負った建設会社の責任者として、工事にかかる一切の権限を会社から移譲されている人を指します。具体的には、工事期間を通して現場に常駐し、契約通りに工事を行うための管理・監督を行い、適切な工程の設定や安全を管理・監督し、工期中の契約内容の変更や突然のトラブルなどがあれば、請負業者として施主（注文主）や協力業者との調整もしながら対処します。

マンション大規模修繕工事の現場代理人には、施工に関する知識や経験はもちろん、協力業者やマンション住民、その他の第３者とのコミュケーション能力が欠かせません。マンション大規模修繕工事に現場代理人の配置は法律上の義務ではありませんが、近年は工事の請負契約の条件に現場代理人の常駐を盛り込むことが一般的です。意外かもしれませんが、現場代理人には特別な資格は不要で、請負業者が自由に選任することができます。

一方、主任技術者は、法律により配置義務を要する技術者です。下請契約の請負代金総額が一定規模を超える工事では、主任技術者の上位にあたる監理技術者を配置します。

主任技術者や監理技術者（以下、監理（主任）技術者）になるには、いずれも、学歴や実務経験、国家資格など、工事の規模や種類などにより定められた要件を満たす必要があります。さらに、監理技術者は監理技術者資格者証の交付を受け、かつ、監理技術者講習を修了していることが必要です。また、監理（主任）技術者は、一般によくいわれる「現場所長」にあたり、施工計画の作成から工程管理、品質管理、安全管理など工事全般にわたって技術的な管理監督を行います。

※上記の説明は、元請け（工事の発注者から直接工事の成功を請け負った場合）を想定しています。

現場代理人と監理（主任）技術者の役割は重なる部分が多く、現場代理人が監理（主任）技術者を兼務することも少なくありません。
その場合、資格を有した技術者が現場代理人になります。

現場代理人と監理（主任）技術者の役割を下記に示します。

①現場代理人：
・契約に沿った工事管理（工事にかかる一切の権限を会社から与えられている。）
・品質、工期、安全、環境等の管理

②監理（主任）技術者：
・工事全般の技術上の管理
・施工に従事する者の技術上の指導監督

マンションの大規模修繕工事は住民が日常生活を送るなかで行われるため、共用設備の使用制限や騒音など、住民生活への支障から不満や苦情が出ることがあります。そのような場合に重要になるのが住民とのコミュニケーションであり、現場代理人はその窓口を担うことが多いです。当社における現場代理人及び監理（主任）技術者の配置は、法律に準拠することはもちろん、工事の特性にも配慮して行っています。

■あわせてお読みください。
・マンション外観から考える　大規模修繕工事の基礎知識
・いま話題のドローンでマンション大規模修繕が変わる？
・マンション修繕費用の積み立て 管理組合の創意工夫とは
・マンション寿命を考える 2回目の大規模修繕は何を優先する？
・マンション管理組合の心得！ 2回目の大規模修繕を迎えるにあたって
・タワーマンション大規模修繕に挑む！ 課題と技術とは　その1
・現場所長に聞く 〜第11回 関西支店　S.I さん編

《この記事のライター》
熊谷 皇
建装工業株式会社　MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境（温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等）。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。

（2021年8月10日新規掲載）
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合がありますので予めご了承下さい。