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マイコプラズマ肺炎が流行中。「歩く肺炎」と呼ばれるのはなぜ?

マイコプラズマ肺炎

「歩く肺炎」と呼ばれるマイコプラズマ肺炎が、2016年以来約8年ぶりに流行しています。主に子どもが罹患するこの病気は、症状が風邪と似ているため、感染に気づきにくいのが特徴です。今回は、マイコプラズマ肺炎とはどんな感染症なのか、症状や感染の仕組みについて解説し、マンションなどの共同生活での感染予防について紹介します。

目次
1. マイコプラズマ肺炎の症状とは? 対処には特定の抗生物質を処方
2. マイコプラズマ肺炎はどのように感染する?「歩く肺炎」と呼ばれる理由
3. 咳エチケットと手洗いうがい マイコプラズマ肺炎の感染予防はマンションでも

マイコプラズマ肺炎の症状とは? 対処には特定の抗生物質を処方

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は「マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)」という細菌に感染することで発症します。初期症状は風邪によく似た発熱や頭痛、倦怠感などから始まり、その後は4週間程度も続く咳へと進行します。
マイコプラズマ肺炎は多くの場合、外来で治療可能ですが、重症化すると酸素吸入や点滴、場合によっては入院が必要です。注意すべきは、マイコプラズマ肺炎が中耳炎、心筋炎、腎機能障害、肝機能障害などの合併症を引き起こす可能性があり、呼吸器以外の症状も注意深く観察する必要があるということです。

マイコプラズマ・ニューモニエは一般的な細菌とは構造が異なり、細胞壁を持たないため、一般的な細菌の細胞壁を破壊するタイプの抗生物質剤では効果が得られず、特定の抗生物質剤が必要です。最も効果的と思われる薬は8歳以上の患者にしか使用できないことから、小学校低学年頃までの児童には、他の抗生物質剤が処方されます。また、発熱や咳、低酸素血症やこれらの合併症が発生した際は、苦痛を緩和する対処療法による治療となります。

マイコプラズマ肺炎はどのように感染する?「歩く肺炎」と呼ばれる理由

マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は伝染性の疾患で、対策を怠ると感染が拡大します。感染経路は飛沫感染と接触感染の2つです。飛沫感染は主に咳やくしゃみなどの飛沫によるもので、接触感染は飛び散った唾液などに触れることが原因とされます。
マイコプラズマ・ニューモニエ自体の感染力は強くはないので、インフルエンザやコロナウイルスに比べて集団感染は発生しにくいです。一方、潜伏期間が2〜3週間と長く、症状が軽くなっても1ヶ月ほどは感染の可能性が続くため、注意が必要です。感染は家庭内や学級内など、濃厚接触が発生する場所で起きやすく、8割以上の罹患者が小児です。
マイコプラズマ肺炎は一般的な抗生物質剤が効きにくいうえ、肺炎が進行するまで症状が咳のみの場合もあります。そのため、罹患に気付かず登校・出勤することで感染が拡大していくため「歩く肺炎」と呼ばれています。長引く乾いた咳、長引く発熱がある時は、マイコプラズマ肺炎の可能性を考えましょう。

咳エチケットと手洗いうがい マイコプラズマ肺炎の感染予防はマンションでも

マイコプラズマ肺炎は、秋から冬にかけて患者が増える季節性の疾患です。5類感染症へ移行した新型コロナウイルス感染症予防のための制限が緩和されたことで、マイコプラズマ肺炎の罹患に気が付いていない人からの感染者の増加も予想されます。
感染経路は飛沫感染と接触感染なので、感染対策としては、正しい手洗いやうがい、咳エチケット、共用設備の清掃などがあります。また、気密性の高いマンションでは特に適切な換気を心がけましょう。
マンションでは乳幼児から高齢者まで様々な世代が同時に生活しているため、住民の意識を高めるためにポスター掲示や回覧板での周知も大切です。

マイコプラズマ肺炎

【マイコプラズマ肺炎の患者報告数の推移(2011年から2024年まで)】
引用:「マイコプラズマ肺炎の報告数が過去最多となりました」(東京都保健医療局)

マイコプラズマ肺炎は数年に1度のペースで流行する傾向があり、今年はその流行期にあたります。特定の地域や学校、特定のマンションなどで、局所的に大流行することも見受けられます。特に5歳から9歳までのこどもへの感染が多く見られることから、マンションでは予防に努めたいものです。


■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネ等)。国土交通省 住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校等の講習会講師、日本建築ドローン協会(JADA)のWG等の委員を歴任。

(2024年10月21日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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