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マンション役員の選出・選任方法とは? 少子高齢化による管理組合の悩みと課題
高齢化の今、マンションの管理組合では理事の選出・選任がスムーズにいかないことが大きな悩みのひとつです。集合住宅のマンションでは区分所有者みんなで協力し、自分たちのマンションを維持管理することが大切です。管理組合のなかでマンション管理を行う場合、理事会の役員を区分所有者の中から選出しなければなりません。働き盛りやお子さんのいるご家庭などは時間がとれないことから敬遠されがちで、高齢の方が理事を引き受ける傾向があります。多様な人で構成される理事会を目指す、マンション役員の選出方法について解説します。
目次
1. 役員の選出・選任方法は? 敬遠されがちな、マンションの管理組合役員
2. 絶対に受けないといけない? 管理組合の役員は多様な人で構成を
3. 管理組合の役員を引き受けることで受けるメリットとは
4. マンション管理組合の役員選出 半数変更がおすすめの理由とは
役員の選出・選任方法は? 敬遠されがちな、マンション管理組合の理事会役員
マンション管理組合の理事会理事(役員)は、定期的に入れ替えを行います。
管理業務など、マンションの日常的な管理については管理会社に委託することも多くありますが、業務を委託しても管理組合を運営する理事の選任・選出は必要です。第三者管理方式では、役員になる必要がない場合があります。しかし、安易に役員にならなくても良いと思い、管理会社による第三者管理方式を選択するのは、利益相反等の発生懸念がありますので注意が必要です。
役員の選任・選出方法は、以下があります。
・輪番制
事前に順番を決め、1年や2年などを任期とした持ち回りで理事となります。
・立候補制
理事をしたい方が立候補し、決定する方法です。意欲がある、ボランティアに慣れている、専門知識がある人が就任すると継続的な運営が可能になるなどのメリットがありますが、一方で癒着やワンマンな運営となる危険もあります。
・推薦など
マンションの住民の中から、理事(役員)に適した人を推薦してもらい、決定する方法です。
いずれの方法でも、年に1度行われる総会で決議をし、選任されます。
推薦や立候補で決まらない場合は輪番制で決めたり抽選を行うというように、複数の方法を併用して役員を選任することが一般的です。
※マンション管理については下記記事も参照ください
⇒マンション管理組合の役員って何をするの? マンションの資産価値を維持しよう(改定版)
⇒マンション管理の3つの形態とは? それぞれのメリットとデメリットについて
絶対に受けないといけない? 管理組合理事会の役員は多様な人で構成を
近年は少子高齢化が急速に進んでおり、区分所有者も高齢化しているのが現状です。高齢者が大半を占めているマンションも少なくありません。
マンションは共同住宅のため、全ての区分所有者が協力をして運営・管理を行いますが、その代表者であるのが理事会であり、理事会が上手く動かないと快適なマンション住まいにはなりません。
しかし、区分所有者の中には、理事(役員)になりたくない人が多くいます。なりたくない理由は「時間を割かないといけない」「専門知識がないから不安」「仕事が忙しい」など様々です。
管理組合がすべての業務を行う自主管理のマンションはマンション全体の6.8%であり、多くのマンションでは管理会社のサポートが主体で、マンション管理士を活用する場合もあります。国土交通省によって標準管理規約やガイドライン、長期修繕計画の標準様式なども公開されており、専門的な知識や知見は外部のプロに頼りながら運営していくことが周知されれば、過度な不安やプレッシャーが解消され、よりスムーズな選任にもつながるでしょう。
また、近年では感染症流行をきっかけに標準管理規約が改正され、オンラインでの総会などIT活用の拡大が明文化されました。コミュニケーションツールを用いての話し合いやクラウドでのデータ管理などITの活用により、フレキシブルな活動が可能となってきましたので、理事の負担は従前と比較すると軽減する可能性もあります。
マンションの管理は、多様な視点による維持・運営が不可欠です。引き受けることを躊躇する人は何かしらの事情があり、その事情こそがマンションに必要な視点です。様々な視点での管理・改善を可能にするためには多様なメンバーで理事会を構成することが大切です。
管理組合の理事会役員を引き受けることで受けるメリットとは
マンションの理事になるということは、面倒なことばかりではありません。
昨今のマンションではつながりが希薄化しているのが現状で、東日本大震災などの災害時、災害支援や避難所運営する際に意思決定層に女性がいないことから様々な問題がクローズアップされました。お子さんのいる家庭や女性だけの家庭、介護が必要な人がいる家庭、若い世代など、様々な視点があるとマンション内の課題を把握しやすくなりますし、理事会のメンバーとなり、居住者を通じて地域とのつながりができれば、住み心地の良さや安心感へとつながります。
また、役員のなり手不足を解消するため、マンションによっては理事会役員に報酬を支払う場合もあり、国土交通省の調査では管理組合の約20%が役員に報酬を支払っています。
理事長や理事がなかなか決まらないマンションなど、理事への報酬を検討するといいかもしれません。
マンション管理組合の役員選出 半数変更がおすすめの理由とは
理事長または理事・監事の改選は一度に全員を改選せず、半数改選がおすすめです。
理事会のメンバーが一度に全員変わってしまうと、すべての業務を引き継ぎしなければなりません。引継ぎがうまくいかないと業務が一時的に立ち行かなくなったり、業務の継続性に支障が出る恐れもあります。
半数の改選にすれば全ての業務の引継ぎは必要なくなり、不明な点があっても理事経験者が残ることから心理的な負担の軽減にもつながります。
近年はマンション区分所有者の高齢化で理事会の運営が困難になっていることを受け「第三者管理者方式」が注目されています。
「第三者管理方式」とは、マンション管理組合の運営を第三者の専門家に委託し運営する方式です。第三者である管理会社や専門家が総会の開催や修繕計画の策定、修繕積立金の管理、予算・決算業務などを進めていきます。しかし、管理会社や専門家に任せたとしても、区分所有者である組合員は運営が適切に進められていることを監視する必要があります。安易に役員にならなくても良いと思い管理会社による第三者管理方式を選択するのは、利益相反等の発生懸念がありますので注意が必要です。
※第三者管理方式については下記記事も参照ください
⇒マンション管理の「第三者管理方式」とは? 増加している理由とメリット・デメリットについて
マンションの適切な管理をし続けていくためには、どの方式でも管理組合が主体となって運営していくことが大切で、そのためには区分所有者が理事になる必要があることには変わりありません。
自分たちが住む大事なマンションだからこそ、区分所有者が主体となり、自分たちの住まいを適切に運営していくことを忘れないようにしたいですね。
■あわせてお読みください。
・マンション管理の「第三者管理方式」とは? 増加している理由とメリット・デメリットについて
・マンション管理計画認定制度 認定取得のポイントとは? 全国初の認定を受けた高島平ハイツ管理組合に伺いました。
・管理組合に聞く シニア向け生活支援付きマンションで行われた“優しい大規模修繕工事”とは? 〜マンションクリエイティブリフォーム賞受賞・メデカマンション桂の事例〜
・マンションでの防災対策。一年に一度の備蓄の日に日常備蓄をチェック!
■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら
(2024年11月25日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。