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100年マンションは管理が決め手? コンクリート耐用年数とマンション寿命の関係

コンクリート耐用年数 マンション寿命

人生100年時代といわれて久しいですが、思い入れのある我が家に末永く住み続けていきたいというのは、住んでいる方にとって一番の願いでしょう。国土交通省の調査では、マンションに住む区分所有者の永住意識は右肩上がりで高くなっています。平均寿命が延び続ける中、マンションは終の住処となり得るのでしょうか。今回は、マンションの寿命と、その寿命を延ばすマンション管理のポイントについて考えてみました。

目次
1. 人生100年時代のマンションに見る耐用年数 寿命とは別、減価償却年数とは
2. 劣化させない管理でコンクリートの中性化を防ぎ100年マンションへ
3. 建物診断・給排水等の設備・耐震基準・建替え及び敷地売却
4. マンション寿命を延ばすために

人生100年時代のマンションに見る耐用年数 寿命とは別、減価償却年数とは

鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物は、法令で耐用年数が47年と定められています。しかし、この耐用年数は実際の建物の状態やマンションの寿命と関係ないことをご存じでしょうか。

法定耐用年数が指しているのは、会計上・税法上で減価償却が可能な期間です。そして、減価償却は時間経過によって減る資産価値を、耐用年数で分割して経費計上するための措置です。したがって、法定耐用年数や減価償却年数は、マンション自体の寿命ではないのです。

コンクリート耐用年数 マンション寿命

では、実際的なマンションの寿命はどれくらいなのでしょうか。国土交通省の調査では建物の適切な管理を行うことにより、100年以上維持できるとされています。さらに言えば構造躯体の耐用年数は120年、外装の仕上げを適宜行うことにより150年程もたせることも、国土交通省は可能としています。マンションは管理の仕方によって法定耐用年数よりも寿命が長くなるのです。

劣化させない管理でコンクリートの中性化を防ぎ100年マンションへ

鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで造られた建物の寿命を短くする大きな要因の1つにコンクリートの中性化があります。

●コンクリートの中性化とは

コンクリート耐用年数 マンション寿命

マンションの新築時に、生コンクリートを流し込み「打設(だせつ)」を行い、硬化した直後のコンクリートは強いアルカリ性を示しますが、経年とともにアルカリ性の成分割合が低下していきます。この様に、アルカリ性のコンクリートが中性に近づくことをコンクリートの中性化といいます。
コンクリートの中性化が進む主な要因は、大気中に存在する炭酸ガスによるものです。炭酸ガスはコンクリート中の余剰水の中に溶け込み炭酸となります。これがH+の供給源となり、中性化が進行します。また、コンクリート表面のひび割れも影響を及ぼします。建物の表面には、経年変化、紫外線の影響、地震、塗膜の劣化など、様々な要因により、ひび割れが発生します。ひび割れが発生するとコンクリートの内部に水分が浸入し、コンクリートの中にある水酸化カルシウムと反応し、炭酸カルシウムが発生します。この化学反応でアルカリ性の水酸化カルシウムが減少すると中性化が進みます。内部の中性化は鉄筋の腐食を引き起こし、建物を内部から破壊・劣化させる「爆裂」が起きることも大きな問題になります。

●コンクリートの中性化を防ぐ方法
コンクリートが中性化する原因は炭酸ガスと接すること及びひび割れから水分が浸入するためなので、コンクリートに被覆を行い内部に水分を浸入させないようにすることが大切です。ひび割れが発生した場合は、エポキシ樹脂などを注入してふさぎ、修繕することで中性化を防止することができます。
しかし、100年マンションを実現させるためには、コンクリートが炭酸ガスと接しない様に塗装・タイルの修繕を定期的に行うことと、ひび割れができる前に「予防保全」で中性化を防ぎ、劣化させない管理を実践することがより大切です。具体的な対策としては、定期的な大規模修繕工事で外壁の補修全般を実施することです。経年劣化等による不具合を定期的に補修することで局部的な中性化の進行と劣化の進行を抑制します。

建物診断・給排水等の設備・耐震基準・建替え及び敷地売却

マンションの寿命を延ばすために行う効果的な対策とはどんなものでしょうか。

●定期的な建物診断

コンクリート耐用年数 マンション寿命

基本的な対策としては、マンションを定期的に診断する「建物診断」を行い、劣化している部分をチェックします。建物診断は大規模修繕工事に向けて行われることが多く、表面だけでなく内部の劣化についても把握することが可能です。適切な診断の下、必要な場合は修繕して適切な管理を行い、建物を万全な状態を維持することで、100年マンションに近づけることができるでしょう。長期修繕計画につきましては、2021年に国土交通省のガイドラインが改定となり、2022年にマンション管理計画認定制度がスタートしました。長期修繕計画作成ガイドラインの主な改定内容は、30年以上の期間で大規模修繕工事を2回以上実施、省エネ性能を向上させる改良・改善工事の有効性、目安とする修繕積立金のm²単価を更新などとなります。
国による政策として、一定の条件下で大規模修繕を行い、長寿命化工事を実施した場合において、翌年度の固定資産税を減額する制度も、マンションの長寿命化を促進するために創設されています。
100年マンションの条件として、マンションの老朽化では、コンクリート自体が劣化することに加えて、給排水設備の劣化にも注意が必要となります。一般的な給排水管などの配管設備の寿命は、25〜35年といわれています。しっかりとした構造躯体であることに加えて共用部及び専有部の配管のメンテナンスも重要となります。

耐震基準の変遷は、1981年5月31日までに建築確認された建物は、「旧耐震基準」で、翌日の1981年6月1日以降に建築確認された建物は、「新耐震基準」(震度6〜7レベルの揺れでも建物が倒壊しない構造基準)となります。旧耐震基準の建物は、耐震診断・耐震補強工事を行い地震に備えることも重要となります。

大規模修繕工事等を行い、建物の寿命を延ばさない場合の選択肢は、「建替え」と「管理組合を解消し敷地売却する」の2点となります。建替えたマンションの比率は、マンションストックは全国で約6,943,000戸(2022年末時点)あり、そのうち建替えが行われているのは282件、23,000戸(2023年現在)で、わずか0.3%となります。築40年超のマンションは2019年92万戸から10年後の2019年には約2.3倍の214万戸、20年後の2029年には約4.2倍の385万戸となるなど、今後、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高経年マンションが急増する見込みで一部改正が行われ、現在も要件緩和等で、法務大臣が分譲マンション建替え要件の緩和を法制審議会に諮問しています。老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化や老朽化が進み維持修繕等が困難なマンションの再生に向けた取組の強化が喫緊の課題となっています。

マンション寿命を延ばすために

マンションの寿命は管理の仕方に大きく左右されます。必要な管理や修繕を定期的に行い、不具合を未然に防ぐことにより、建物の寿命はさらに延びます。マンションの定期的な管理や修繕には、管理組合の努力や大きな手間と費用がかかりますが、100年マンションを目指してしっかりと管理することで、末永く住み続けられるマンションになるでしょう。

■あわせてお読みください。
管理組合に聞く 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(前編)
管理組合に聞く 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(後編)
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■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2024年8月5日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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