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姿はカモメ、声は猫? 住民を悩ますウミネコ被害 マンションでできる対策とは
近年、東京都心でウミネコによる被害が問題となっています。ウミネコがマンションやビルの屋上に巣を作って繁殖し、昼夜を問わない鳴き声による騒音やフン害で住民を悩ませているのです。本来、沿岸や離島の岩礁などで繁殖するウミネコが、なぜ都心部で爆発的に増えているのでしょうか?
今回は、ウミネコの生態と都内に定着した背景、そしてマンションで実施可能な被害防止対策についてご紹介します。
目次
1. 不思議な海鳥「ウミネコ」の生態とは?ユリカモメとは違うの?
2. 都心でのウミネコ爆発的繁殖の理由と適応力
3. ウミネコ被害からマンションを守ろう 繁殖期までの管理と防止対策
不思議な海鳥「ウミネコ」の生態とは?ユリカモメとは違うの?
ウミネコは、チドリ目カモメ科カモメ属に分類される海鳥で、「ミャー」とか「ア゛ー」など猫のような鳴き声がその名の由来とされています。
ウミネコは全国の沿岸部でよく見かけられるほか東京湾にも生息しており、同じくカモメ科に属するユリカモメとはその特徴で区別することができます。ユリカモメはくちばしと脚が赤く、ハトほどの大きさであるのに対して、ウミネコは、くちばしが黄色で黒い帯と赤い斑があり、目の周りは赤く、カラスほどの大きさです。
ウミネコの繁殖期は4〜8月で小さな島や岩礁などに集まって巣をつくります。オスとメスが協力し、草原や岸壁、岩場の上などに枯草や海藻・羽毛などを敷いた巣をつくります。一度に2〜3個の卵を産み、約25日後に孵化(ふか)し、親鳥は魚や砂浜の生物を餌としてヒナを育てます。
ウミネコは雑食性で、海面の魚や魚加工場から出る廃棄物、砂浜のゴカイやカニなどを食べます。ウミネコの集団繁殖地である蕪島(青森県)、陸前江ノ島(宮城県)、経島(島根県)などの離島では、天然記念物や鳥獣保護区に指定され保護されています。
通常、ウミネコは人里離れた離島で繁殖しますが、都心で急速に増えていることが注目されています。
それではなぜウミネコは人が多く住む都心で増えたのでしょうか?
都心でのウミネコ爆発的繁殖の理由と適応力
都心でウミネコの繁殖が始まったきっかけは、恩賜上野動物園によるウミネコ保護個体の放鳥とみられています。1990年と1994年に保護されたウミネコを野生に戻して以来、繁殖の失敗が続いていましたが、1997年に初めて成功しました(東京都環境局資料)。
その後、上野周辺のマンション屋上などで繁殖を繰り返し、ウミネコは急速に分布を広げました。現在は墨田区や江東区でも確認され、200〜300羽が生息している地区もあります。
※参考:「ウミネコの被害状況及び対策について」(東京都環境局)
離島などの自然下でウミネコが繁殖できる理由の一つはキツネなどの天敵から身を守れることです。同様に都心であることも天敵に狙われにくい環境です。
東京都では一定規模以上の建物を新築・増改築する際に屋上・壁面・ベランダの緑化が義務付けられており、緑化された屋上は雨風や日差しを防ぎ、開けた前方は危険を察知しやすい好条件の環境となります。
人工物が多い東京都心のビル街ですが、ウミネコが子育てできる条件が整っていることから、巣作りの好適地となっているのです。
ウミネコが都市環境に適応した過程については、行政や専門家による調査・研究が継続中であり、科学的な見解は今後明らかにされるでしょう。
ウミネコ被害からマンションを守ろう 繁殖期までの管理と防止対策
現在、都内のマンションやビルの屋上に生息しているウミネコの鳴き声やフンによる被害が問題となり、近隣住民にとって悩みの種となっています。これらの被害を防ぐには、巣をつくらせないよう、繁殖期を迎える前の3月から4月に適切な対策を講じることが重要です。ウミネコは一度繁殖に成功した場所へ翌年も戻ってくる習性があるため、早期の対応が欠かせません。
特に人の出入りが少ない屋上緑化を施した高層マンションは、巣づくりの場として狙われやすいため注意が必要です。屋上の管理をこまめに行い、設備のくぼみや物陰など、巣作りに適した場所がないか定期的に点検しましょう。
<巣づくりの場所として狙われないための対応策の例>
・定期的な清掃と草刈り
排水溝や吹き溜まりなど、ウミネコが身を隠せる場所を作らないよう、定期的に清掃や草刈りを行います。
・防除ネットの設置
園芸用ポールと丈夫な紐を使って屋上全体を防除ネットで覆い、ウミネコの侵入を防ぎましょう。
・釣り糸の設置
屋上の縁に釣り糸を張り、ウミネコがとまれないようにするのも有効な手段です。
・近隣マンション(建物)との連携
防除対策をしないマンションにウミネコが移動する可能性があるため、近隣マンション(建物)の管理者同士で情報を共有し、協力して対策を行うことが望ましいです。
<法的対応と相談先>
鳥獣保護管理法により、ウミネコを含む野鳥の捕獲は禁止されています。しかし、一部の自治体では、生活環境への被害を考慮し、上限を定めた巣の撤去や卵・雛の捕獲が許可されるケースもあります。ウミネコの営巣を確認した場合は、区役所の環境保全課など所管する自治体の窓口に相談しましょう。
今回の記事では、ウミネコを害鳥のように説明してきましたが、ウミネコの繁殖は人間がウミネコの住処を奪ってしまったことに起因するともいわれています。また、ウミネコは海辺の生態系を構成する大切な生きものであり、東京都のレッドデータブックで「留意種※」とされています。
※ 現時点では絶滅の危機はないものの、環境の変化で個体数が減少する可能性がある種
適切な防除対策を行い、ウミネコと人が暮らす範囲をうまく棲み分けし、共生できるようにしたいものです。
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■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネルギー)。国土交通省住宅の省エネ基準検討WG委員、日本産業規格JIS A 9521(2017)技術コンサル、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校の講師、日本建築ドローン協会(JADA)WG委員を歴任。
(2024年12月23日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。