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マンションの長期修繕計画は見直すべき?

マンション大規模修繕 長期修繕計画

1. マンション大規模修繕工事の計画とは

マンションの状態を良好に維持するためには、定期的な大規模修繕工事が欠かせません。
いつ、どのようにマンション大規模修繕工事を行うかは長期修繕計画によって予定されます。修繕の仕方でマンションの性能や住み心地は大きく変わってきますから、長期修繕計画はマンションにとって非常に大事なものです。

現在は、長期修繕計画は新築のマンションの分譲時に建設会社によって用意されるのが一般的ですが、これはマンション完成前に作られたものです。
また、あくまでも一般的な事態を想定して作ったものなので、住民が生活しながら年数を経ていくなかで、それぞれのマンションの実際の状況にあわせて見直していく必要があります。その方法やタイミングについてお話ししたいと思います。

2. 長期修繕計画とは、どんなもの?

そもそも、マンションの長期修繕計画とはどのようなものか少し詳しく説明しましょう。
長期修繕計画は、通常10年から30年ほどの長いスパンでマンション各部の大規模な修繕工事を、いつ、どれくらいの費用で行うか計画するものです。
各部の工事には、鉄部の塗装、外壁塗装、屋上防水、給排水管の更新、設備の更新などが含まれます。これらの部分や設備の修繕や更新の工事は、それぞれ必要になる時期が異なりますし、マンションの工法や仕様によっても修繕時期は変わってきます。
長期修繕計画には、こうした各種の大規模修繕工事をいつ実施するかに加え、かかる費用についての収支計画の策定も含まれます。

このように、分譲マンションを維持管理していく上で非常に大切なものといえる長期修繕計画ですが、通常、マンション管理規約で管理組合に長期修繕計画の作成が義務付けられています。
国土交通省による「マンション標準管理規約」(単棟型)では、管理組合の業務として「長期修繕計画の作成又は変更に関する業務及び長期修繕計画書の管理」(第32条)、管理組合の理事会の業務として「長期修繕計画の作成又は変更に関する案」(第54条)が規定されています。

3. 誰が長期修繕計画を作る?

以上のことから、マンションの長期修繕計画は管理組合が作るものであることがおわかりかと思います。
また、上述のように分譲時に用意された長期修繕計画では、時間が経つうちに当初の想定通りというわけにはいかなくなっていきます。実際の建物の状態をよく確認せずに当初の計画で修繕工事を進めてしまうと、必要な箇所に修理がされず、逆に必要ではない箇所に工事をしてしまうなど、大切な修繕積立金の用途が不適切になり、マンションを適切に維持管理できなくなってしまいます。

そのため、マンションの長期修繕計画は、実際の建物や設備の劣化の状況にあわせてフレキシブルに見直し、変更していくことが欠かせません。
もちろん、この見直しと変更を行うのは管理組合であり、大切な住まいであるマンションの長期修繕計画は自分たちで作るという意識が重要ですしかし、長期修繕計画の作成は専門性の高い業務で、初めての方には作成が難しいのも事実です。
そこで、一級建築士やマンション管理士などの専門家の協力を得ながら、長期修繕計画の見直しを行うことになります。
マンション大規模修繕 長期修繕計画

4. 長期修繕計画は、いつ、どう見直す

長期修繕計画の見直しの時期ですが、建築技術や法令は5年から10年くらいで変わることが多く、5年に1度程度の周期で見直すのが望ましいとされています。
また、マンションの建物の部分で最も工事のサイクルが短いとされる鉄部は数年程度で塗装が必要になります。一般的な目安としても、実際の劣化具合を確認するのには、やはり5年程度が適したタイミングではないでしょうか。

実際に長期修繕計画を見直すには、現状の建物や設備の状況を見きわめなければなりません。
そのためには、専門家による劣化診断を受ける必要があります。劣化診断はマンションの分譲会社やその系列会社、委託している管理会社などに依頼することができます。
劣化診断において重要なのは、住民の立場を理解し、できる限り客観的な診断をしてもらうことなので、そういった面から見れば、設計事務所やNPO法人などの第三者的な立場にあり、信頼のおけるところに依頼することもおすすめできます。

長期修繕計画は、ただ単に建物のメンテナンス計画を立てるだけではなく、住民から集めた修繕積立金をどのように使っていくかを決める大切な計画です。
信頼できる専門家の力を借りながら、管理組合が主体的に見直し、より良いものにしていきたいですね。
マンション大規模修繕 長期修繕計画
【出典元】
国土交通省 マンション管理について


《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター

(2019年9月2日記事更新)

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