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新耐震基準の「新」ってなに?

新耐震基準

はじめに

お住まいのマンションの耐震性は大丈夫だろうか、と思ったことはありませんか?そこでポイントになるのが、「新」耐震基準に対応しているかどうかということです。
なんとなく聞いたことがあるけれど、詳しくはよく分からないという方のために、少し掘り下げてみたいと思います。
旧耐震基準と新耐震基準を比べながら、「旧」や「新」の意味合いについて解説します。

目次
1. 基準のおはなし
2. ポイント
3. まとめ

1. 基準のおはなし

「新」という言葉が入っているのでごく最近の基準と思われるかもしれませんが、実は1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用される建物が新耐震基準です。
ここでいう建築確認とは、建築基準法等の関係法令に即した建築物であることを行政が確認することです。建築確認を受けて初めて工事を始めることができるので、完成までに1年程度かかるマンションであれば、マンションが完成した建築年月日の1年以上前ということになります。

この1981年6月1日より前に建築確認が行われた建物に適用されるのが、旧耐震基準と呼ばれています。
ここでいう建築確認の日付がどこで分かるかというと、建築確認証や検査済証に記載されている日付けのことです。興味のある方は、ぜひ一度書類を確認してみてください。

大きな改正があった理由として、1978年に起きた宮城県沖地震が契機となったと言われています。
どんな地震だったかというと、仙台市のホームページによると、「昭和53年(1978年)6月12日、17時14分、マグニチュード7.4(震度5)の地震が仙台市を襲いました。
気象庁により「1978年宮城県沖地震」と命名されたこの地震では、現在の仙台市域(旧泉市・旧宮城町・旧秋保町の区域を含む。)で、死者16人、重軽傷者10119人、住家の全半壊が4385戸、一部損壊が86010戸という多大な被害が生じました。
この地震は、当時の人口50万人以上の都市が初めて経験した都市型地震の典型といわれました。」とあります。
これの被害を教訓に建築基準法が見直されて、改正されました。

これ以外にも大地震を経験するたびに建物の被害状況などを検証して、改正を繰り返していることから建築基準法は「生きた法律」とも言われています。

参照:仙台市ホームページ「1978年宮城県沖地震」
新耐震基準

2. ポイント

新耐震基準の特徴として、震度6強〜7の地震で倒壊・崩壊しない強度であることが最低条件となっています。国土交通省の資料によってポイントをまとめると、

1)大地震に対する安全性を確認するための構造計算方法として「二次設計」を新設
(建物の構造形式等に応じて、構造計算のフローとして3つの計算ルートを作り、そのいずれかを適用)
2)地震力の計算方法を見直し(上階にいくほど大きな力が加わるように見直し)
3)木造、鉄筋コンクリート造、補強コンクリートブロック塀等の仕様規定の強化

といったことがあげられます。

参照:国土交通省ホームページ 参考資料「建築関係法の概要」

特に 3)については、宮城県沖地震による死者16名のうち、11名がブロック塀の倒壊によって犠牲となっています。

ここで、改めて旧耐震基準と新耐震基準を整理してみますと、以下の表となります。
新耐震基準
このように、旧耐震基準では、大地震に対しては特に規定がなかったのが新耐震基準においては、大地震に対しての基準具体的には震度6強〜7程度で倒壊・崩壊しないことといったこと規定されたといった点が大きなポイントです。

3. まとめ

もちろん、これ以降の震災を契機にして建築基準法の改正や、耐震改修促進法の制定や改正。一定の建物の耐震診断の義務化等。様々なことを経て、現在に至っています。
ぜひ、興味のある方は、調べてみてください。

今後もKENSO-Magazineで耐震に関することを取り上げるのと、建装工業株式会社で実際に行った耐震改修についても積極的に取り上げていますので、ぜひご覧ください。


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《この記事のライター》
冨沢 彰之
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
群馬県出身 東京農業大学農学研究科農業工学専攻 修了
一級建築施工管理技士・防災士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある男性技術者・ライター

(2020年10月19日記事更新)

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