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住まいながらの耐震補強を実現 「トーカンマンション王子」における大規模修繕工事
目次
1. 30年目のマンション大規模修繕工事は大きな節目?
2. 住みながら住戸内に耐震補強 工事成功のポイントは
3. カギとなった住民間の合意形成とコミュニケーション
4. 住民に喜ばれる大規模修繕工事となった理由
1. 30年目のマンション大規模修繕工事は大きな節目?
2. 住みながら住戸内に耐震補強 工事成功のポイントは
3. カギとなった住民間の合意形成とコミュニケーション
4. 住民に喜ばれる大規模修繕工事となった理由
1. 30年目のマンション大規模修繕工事は大きな節目?
1950年代に、日本発の分譲マンションができてから、約70年がたとうとしています。今後、築30年を超えるマンションが急増することが予想されています。マンションで築30年といえば、2度目か3度目の大規模修繕工事を迎える頃ですが、この時期のマンション大規模修繕工事は居住性や資産価値の維持向上を図る上で大きな節目になります。また、これらのマンションには旧耐震基準のままとなっている建物もあり、その場合は耐震改修の検討も必要でしょう。既存のマンションの耐震改修は住民が居住したままで行うことになるため、何かと問題を伴います。今回は、そうした問題を解決しながら、耐震改修を兼ねて行われた旧耐震基準マンションの大規模修繕工事の事例をご紹介します。
工事が行われたのは、東京都内に立地する、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造、地上9階建ての「トーカンマンション王子」です。同マンションが建てられたのは昭和56(1981)年です。新築から34年目にあたる平成27(2015)年には、大規模修繕工事と、耐震性能を現行基準まで引き上げる耐震改修工事、給水システムの更新工事がすべて同時に行われました。
このマンションは、敷地が狭小で外部からの耐震補強が困難だったため、耐震化を兼ねた給水方式への変更などによってコストを抑えました。これにより様々な条件をクリアして建物を再生させた事例として、(一社)マンション計画修繕施工協会 第6 回クリエイティブリフォーム賞を受賞しています。
工事が行われたのは、東京都内に立地する、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造、地上9階建ての「トーカンマンション王子」です。同マンションが建てられたのは昭和56(1981)年です。新築から34年目にあたる平成27(2015)年には、大規模修繕工事と、耐震性能を現行基準まで引き上げる耐震改修工事、給水システムの更新工事がすべて同時に行われました。
このマンションは、敷地が狭小で外部からの耐震補強が困難だったため、耐震化を兼ねた給水方式への変更などによってコストを抑えました。これにより様々な条件をクリアして建物を再生させた事例として、(一社)マンション計画修繕施工協会 第6 回クリエイティブリフォーム賞を受賞しています。
2. 住みながら住戸内に耐震補強 工事成功のポイントは
今回の工事には、成功につながる複数の重要なポイントがありました。その一つが住戸内の耐震補強工事です。この建物の敷地は隣地に近接しており、建物の外側から補強することが難しかったため、住戸内に耐震改修工事を行うことになりました。建物の外側から補強する方法とは、既存の柱や梁を補強するように、屋外側にフレームなどを増設する工事です。柱や梁が現状よりも外側に出て太くなるので、隣地との間隔をある程度必要とするため、トーカンマンション王子ではこれを採用することができませんでした。そこで、耐力壁を設けたり、SRFと呼ばれる耐震被覆を既存の構造に貼り付けたりという方法をとりました。
住戸は当然ながら住民が生活する場なので、工事は日常生活に影響します。そこで、事前に設計者が住戸の模型を用意するなど、丁寧に説明することで、住民の皆様から理解と協力を得ることができました。施工中はトイレや浴槽など一部の水回り設備を住戸内で仮移動させつつ、従来の居住区画も確保し、日常生活への影響をできるだけ抑えるようにしました。
3. カギとなった住民間の合意形成とコミュニケーション
また、住民の皆様には耐震工事だけにとどまらず、大規模修繕工事まで含めた工事全体についても十分に理解していただけました。これは、設計者が根気強く説明したことに加え、管理組合内の理事会がリーダーシップを取り、住民間の合意がしっかりと形成されていたのも大きなポイントです。そして、さらに重要だったのがマンションの住民や近隣とのコミュニケーションです。
今回の工事では、女性の現場担当者を専属で配置し、広報活動と住民対応を行いました。トーカンマンション王子は、年配女性の住民が多かったこともあり、この女性担当者と住民が一緒に室内のクロス選びやバルコニー検査をしたり、スムーズなコミュニケーション体制を築けました。担当者の顔と名前を覚えていただき、苦情もほとんどなく工事を終えられたことは、女性の工事現場活用における好例といえるでしょう。
今回の工事では、女性の現場担当者を専属で配置し、広報活動と住民対応を行いました。トーカンマンション王子は、年配女性の住民が多かったこともあり、この女性担当者と住民が一緒に室内のクロス選びやバルコニー検査をしたり、スムーズなコミュニケーション体制を築けました。担当者の顔と名前を覚えていただき、苦情もほとんどなく工事を終えられたことは、女性の工事現場活用における好例といえるでしょう。
4. 住民に喜ばれる大規模修繕工事となった理由
当初は、設備、耐震改修、大規模修繕工事と、順次工事を実施することも検討しました。しかし、耐震改修工事については住戸内の補強工事を主とするため、作業工程を綿密に調整してみたところ、外壁を中心に行う大規模修繕工事と平行させることが可能との判断に至り、同時に施工することになったのです。これにより、工期をおよそ半年に短縮でき、住民の負担を減らせました。
また、美観や給水システムの向上についても住民には喜んでいただけました。給水システムは、直結増圧方式にすることで、上階の住戸でも水の出が良くなり、受水槽や揚水ポンプを廃止することでランニングコストが低減しました。さらには無事に工事を終えて「耐震改修済」マンションとなり、自治体による耐震化促進に関連する助成金も受け取れることとなりました。
トーカンマンション王子の耐震改修工事およびマンション大規模修繕工事では、建物特有の課題をクリアし、設備性能と資産価値の向上を実現したことが満足いただける結果につながりました。これは、しっかりとした住民の合意形成と、円滑なコミュニケーションがあってこその結果だと考えられます。
また、美観や給水システムの向上についても住民には喜んでいただけました。給水システムは、直結増圧方式にすることで、上階の住戸でも水の出が良くなり、受水槽や揚水ポンプを廃止することでランニングコストが低減しました。さらには無事に工事を終えて「耐震改修済」マンションとなり、自治体による耐震化促進に関連する助成金も受け取れることとなりました。
トーカンマンション王子の耐震改修工事およびマンション大規模修繕工事では、建物特有の課題をクリアし、設備性能と資産価値の向上を実現したことが満足いただける結果につながりました。これは、しっかりとした住民の合意形成と、円滑なコミュニケーションがあってこその結果だと考えられます。
《この記事のライター》
大塚 麻里絵
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター
(2019年10月1日記事更新)
★詳しくはこちらをご参照ください。
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