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管理組合の理事長に聞く 大規模修繕工事と基本性能を高める改修工事を併せて実施した取り組み 〜練馬区江古田パークマンション〜 後編
「大規模修繕工事」は、劣化や不具合が発生した部分を補修することで、性能や機能を新築時の水準まで回復することを目標とした工事です。
今回は一般的な「大規模修繕工事」に加えて、耐震性・断熱性といった基本性能を高める「改修工事」も併せて行うことに取り組んだ管理組合の理事長へのインタビュー記事をご紹介します。
理事長から「苦労したこと」「印象的なできごと」など、リアルな声を色々と伺うことができました。是非、これから大規模修繕工事に取り組まれる方の参考になればと思います。
今回は理事長へのインタビュー記事(後編)をご紹介します。
目次
1. 今回の工事で、「良かったこと・うまくいったこと」を教えて下さい。
2. 今回の工事で、「印象的な出来事」を教えてください。
3. 今回行った「耐震性能・断熱性能といった基本性能を高める改修工事」について、感想をお聞かせください。
4. 建装工業へのご意見や感想などをお聞かせ下さい。
5. 他のマンションの管理組合の方にアドバイスなどありましたらお教えください。
1. 今回の工事で、「良かったこと・うまくいったこと」を教えて下さい。
今、振り返ると住民の方たちのご理解をいただき、協力者も多かったと思います。自ら理事に立候補して頂いた元銀行員の方から精度が高いファイナンシャルプランの提案を頂きました。
また管理員さんがマンション工事を熟知されていて、以前、積算事務所を経営されていたスキルの高い方でしたので大活躍して頂きました。
また、ニュースレターを活用した情報共有も成功要因の一つと思っています。
これだけ多くの人がいると当然、意見の食い違いが生じますが、工事を円滑に進めることができたのは居住者・管理組合・設計工事会社の三者が協働し合えたからこそと思います。
松井理事長(「松井郁夫建築設計事務所」にて)
2. 今回の工事で、「印象的な出来事」を教えてください。
コロナ禍で在宅している人が多かったと思いますが、工事中の苦情が少なかったことに驚いています。
特に耐震工事は夏に実施され、工事中、非常に大きな音が出るので暑い中にも関わらず窓を閉めて頂きました。したがって、少々の苦情は仕方がないと覚悟していましたが、殆ど苦情がありませんでした。
恐らく皆さん耐震工事に期待して我慢して頂いたのだと思います。とても感謝しています。
工事中に足場で囲われたマンションの様子
3. 今回行った「耐震性能・断熱性能といった基本性能を高める改修工事」について、感想をお聞かせください。
※耐震性能:外付けRCフレーム工法、断熱性能:窓、玄関扉交換
居住者の皆さんに大変喜んでいただいて大好評です。個人的には耐震補強により基本性能が高まったことで、安心して孫を呼ぶことできるようになりました。
また、窓・玄関を断熱化したことで、「玄関の結露がなくなった」とか、「リビングルームの窓際の寒さが減った」との声も聞いています。
また、玄関ドアの交換により防犯性も高まり、安心と快適の生活向上が実現できて良かったと思います。
リニューアル後のマンションの外観 (ベランダ側に耐震補強のフレーム設置)
4. 建装工業へのご意見や感想などをお聞かせ下さい。
建装工業は事務方と職人さんたちのチームワークが良く、横のつながりや風通しが良い印象を受けました。
当初は、建装工業のことをよく知らなかったのですが、後から修繕分野の最大手企業であることがわかりました。
今回の工事に対して住民からは、「本当に良くやってくれて感謝している」とか「良い現場所長にめぐりあえた」という声をたくさん聞いています。
工事中は建装さんへの差し入れも多くいただきました。
工事は勿論、理事会や総会にも参加していただき、住民の合意形成にも大いに役に立っていただき協力を得ることができたことを感謝しています。
リニューアル後のマンションの全景(ドローンにより撮影)
5. 他のマンションの管理組合の方にアドバイスなどありましたらお教えください。
マンションには様々な人たちの多様な意見を如何に取りまとめて合意形成するかが要だと思います。
その為には、「計画案についてきちんと筋が通り、根拠を示すこと」「反対意見も頭から否定せずに聞き取ること」「時には清濁併せ飲む判断をすること」など多くのポイントがあります。
一人ひとり意見は違っても「一つ屋根の下に住んでいる家族」なのだから、すべての意見を聞いて、不満や要望が何かあれば素早く対応するといった当たり前のことを丁寧に実施することが大切と思います。
今はコロナの影響で控えていますが、理事会後の「飲みにケーション(私たちはこれを「うがい」と呼んでいます)」も大事だと思っています。
コロナが落ち着いたらあらためて開催したいです。
今回の工事で耐震性能・断熱性能・遮音性能・防犯性能といった基本性能を高めたことによって、安心性・安全性・快適性が向上し、その上、外観も美しくなり、本当に良い工事をして頂きました。
これで資産価値も少しは高まったのではないでしょうか。マンションの住民の多くは、結構よい年齢になりましたが、最後まで仲良くこのマンションに住みたいと思っています。
この工事現場を担当した現場所長から一言
住民の皆様から良い評価を頂き、嬉しく思っております。
今回の工事では、理事長をはじめとして理事会・修繕委員会の皆様、その他のマンションの住民の皆様には、工事中に発生した課題に対して素早く円滑に合意形成して頂きました。
また、皆様が良く話を聞いて下さったので、気が付いたことは遠慮なくご提案させて頂きました。
大変、仕事を進めやすい環境を作って頂き、工事に集中することができましたことを感謝申し上げます。有難うございました。
■あわせてお読みください。
・管理組合の理事長に聞く 大規模修繕工事と基本性能を高める改修工事を併せて実施した取り組み 〜練馬区江古田パークマンション〜 前編
・管理組合に聞く 住民主体による大規模修繕工事とコミュニティ活動でマンションを100年持たせる取り組み 〜労住まきのハイツの事例〜(前編)
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《この記事のライター》
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。
■インタビュアー:建装工業 熊谷 皇、市川 裕樹
■写真撮影:富沢 彰之
(2021年5月24日新規掲載)