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ハエトリグモの驚異的な視力とマンションに入る理由とは?
家の中で床の上をぴょんぴょんと跳びまわる小さな蜘蛛を目にしたことはありませんか?
それはハエトリグモ科に属する蜘蛛です。ハエトリグモは蜘蛛の巣を張らずに、獲物に向かってジャンプして捕食します。
そのユーモラスな動きと大きな眼がかわいいと、一部の人々には人気があります。
今回は、マンションの屋内でも観察されるハエトリグモ科の仲間と、その驚くべき視覚機能を紹介します。
目次
1. アダンソンハエトリだけじゃない、マンションに現れるハエトリグモの種類
2. かわいい眼のハエトリグモ 視覚はスゴイ? 主眼と副眼のしくみとは
3. ハエトリグモの季節ごとの生態とマンションにおける行動の関係とは
アダンソンハエトリだけじゃない、マンションに現れるハエトリグモの種類
ハエトリグモは、節足動物門クモ綱クモ目ハエトリグモ科に属するクモ類の総称です。屋内から高山まで広く生息し、壁や塀、葉の上、木の幹などを跳び回り、獲物を探します。
一般的に、蜘蛛は獲物を捕まえるために蜘蛛の巣として知られる「網」を張るイメージがありますが、ハエトリグモは移動しながら獲物に跳びついて捕まえるので、網を張ることはありません。ジャンプする動きが特徴的なので、英名は「jumping spider(ジャンピング スパイダー)」と名付けられています。
ハエトリグモには毒がなく、家の中のハエやゴキブリの子どもなどの害虫を食べてくれるので、人間にとって役立つ益虫的な存在です。
日本では100種以上のハエトリグモが確認されており、特に家の中では「アダンソンハエトリ」「ミスジハエトリ」「チャスジハエトリ」の3種がよく見られます。
アダンソンハエトリ | ミスジハエトリ | チャスジハエトリ |
●アダンソンハエトリ
オスは全体的に黒く、頭胸部と腹部の背面に白い三日月模様の斑紋があります。メスは全体的に褐色で、腹部に独特の波打つような独特の斑紋があります。
●ミスジハエトリ
オスは腹部の背面に2本の黒い筋があり、頭胸部に赤い帯があります。正面から顔を見ると眼の上に赤い帯があるのも特徴です。
メスは全体的にくすんだ褐色で、腹部の背面に一対の縦筋があります。
屋内に入ってくるアダンソンハエトリに追い出され、主に屋外で見られます。
●チャスジハエトリ
オスは、頭胸部から腹部にかけての背面に黒の筋があり、正面から見ると眼の周囲にも縦縞があります。メスは全体的に褐色で、他2種と比べて斑紋が複雑です。
かわいい眼のハエトリグモ 視覚はスゴイ? 主眼と副眼のしくみとは
ハエトリグモの大きくてかわいい眼は、中央にある1対の主眼です。主眼と3対の副眼の4対が、頭胸部に横1列に並んでいます。
発達した筋肉が眼球を動かして焦点を合わせ、網膜にある4つの層がそれぞれ異なる波長の光を捉えることが分かっています。この視覚の仕組みにより、対象物はピンぼけに見えますが、ハエトリグモはこのピンぼけの度合いを利用して対象物との距離や奥行きを判断しています。
一方、副眼は広い視野を持っており、広範囲で動く獲物を見逃さずに捉えるのに役立ちます。動きを敏感に察知し、体の向きを変えて主眼で距離を測ります。
ハエトリグモは、動き方を捉えて生物かどうかを判断できます。脊椎動物以外でこの能力が見つかったのは初めてです。また、多くの蜘蛛は振動や匂いを利用して求愛行動をしますが、視覚が発達しているハエトリグモは、求愛のポーズでオスがメスにアピールします。
ほとんどの蜘蛛は明暗しか感知できませんが、ハエトリグモ類の眼は高度に進化しており、蜘蛛の中では唯一、赤を認識できる色覚を持っています。
この眼の機能は幼少期から備わっており、エサ探しや天敵から逃げる場合に役立ちます。
網を張らずに獲物を探し回る習性があるため、進化の過程で他にはない優れた視力を手に入れたと言われています。
ハエトリグモの季節ごとの生態とマンションにおける行動の関係とは
ハエトリグモは人に迷惑をかけず、静かに共存しています。しかし、室内に虫がいることを不快に感じる人もいるかもしれません。
ハエトリグモは春から秋に活動のピークを迎え繁殖します。冬には徐々に活動が低下し、寒さをしのげる場所で越冬します。ハエトリグモは以下の理由で家の中に侵入します。
●気候の変化
寒さや暑さ、雨を避けるため。
●繁殖適地環境
捕食者が少なく隠れ場所が多い家で、卵を産むため。ちなみに普段はエサを捕まえるために蜘蛛の巣を作らないハエトリグモも、越冬・産卵のために巣を張ります。
●エサ探し
室内で食べものやゴミの匂いによって小さな虫が発生していれば、エサを求めて引き寄せられます。
●偶然の侵入
外から搬入される物や人に付着したまま、家の中に入ってしまう。
☆ハエトリグモに出会ったときの対処法については、こちらの記事もご覧ください。
⇒家の中でぴょんぴょん跳ねる小さい蜘蛛。『アダンソンハエトリ』は衛生環境のリトマス試験紙?
今回は、マンションに現れる主なハエトリグモの種類や生態、そしてハエトリグモの眼がもつ興味深い機能について紹介しました。
ハエトリグモは、ハエなどの害虫を食べるため、蜘蛛は商売繁盛の縁起物とされたり、昔から人と共存してきました。
ハエトリグモの能力は、さらなる研究によって今後明らかになる可能性があります。
部屋の中でハエトリグモに遭遇したときは、その視覚を駆使して対象を確かめようとする姿を観察してみてはいかがでしょうか?
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■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネルギー)。国土交通省住宅の省エネ基準検討WG委員、日本産業規格JIS A 9521(2017)技術コンサル、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校の講師、日本建築ドローン協会(JADA)WG委員を歴任。
(2024年12月9日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。