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のぞいてみよう! 施工中現場紹介 〜ザ・シーン徳川園大規模修繕工事〜
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【ザ・シーン徳川園大規模修繕工事概況写真】
日本におけるタワーマンションの歴史は1960年代に始まり、1970〜1980年代に発展を遂げ、1990年代後半から2000年代初頭にかけて最盛期を迎えました。そのため、多くのタワーマンションでは1回目の大規模修繕が行われています。今回は、タワーマンションとしては珍しい2回目の大規模修繕工事についてレポートいたします。
ザ・シーン徳川園では、1回目の大規模修繕工事を2002年に当社が1次下請けとして実施し、その後排水管更新工事も2021年に当社で、そして今回2回目の大規模修繕工事も当社で実施することになりました。今回は、タワーマンションの2回目の大規模修繕工事において注意すべきポイントと、本現場の特徴についてお伝えします。
目次
1. 本現場の基本状況
2. ご採用頂いた経緯と今回の工事の特徴
3. 今回の工事で工夫している点
4. 今回の工事で苦労している点
5. 工事竣工までの意気込み
6. 最後に
1. 本現場の基本状況
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【ザ・シーン徳川園大規模修繕工事の施工中外観】
工事名称 | ザ・シーン徳川園大規模修繕工事 |
構造・規模 | 鉄筋コンクリート造、30階建・地下1階・塔屋1階 |
総戸数 | 157戸 |
所在地 | 愛知県名古屋市東区出来町2丁目 |
竣工年 | 1990年(平成2年)2月 築34年経過 |
工期 | 2024年2月〜2025年3月(予定) |
発注者 | ザ・シーン徳川園管理組合 |
工事内容 | 外壁塗装、タイル補修、防水工事、他工事 |
取材日 | 2024年11月13日(水) |
話を聞いた人 | 中部支店 工事部 安藤所長 |
2. ご採用頂いた経緯と今回の工事の特徴
施工業者の選定では、複数社からの見積取得やヒアリングが実施されたと伺っています。当社は第1回目の大規模修繕工事や排水管更新工事を担当した実績があるため、見積参加業者の中で最もマンションの特性を把握しています。この経験を活かし、計画においては、中部支店全体で取り組んで、管理組合様へ最適な御提案を提供致しました。その結果、第2回目大規模修繕工事を管理組合様からご採用いただきました。
今回の工事は中部地区で最も歴史のあるタワーマンションで、大規模修繕工事が2回目の大規模修繕工事であり、特に劣化が目立つ部分への対策を入念に行うこと、またタワーマンション特有の飛散対策に力を入れることが特徴です。さらに、今回の工事では、ダイキン社の「トリオシステム」(現在販売されていないエアコン・給湯一体型システム)を撤去するという特殊な作業も含まれています。このようなポイントを踏まえ、細部にわたる配慮と技術で対応しています。
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【ザ・シーン徳川園大規模修繕工事の施工中外観】
3. 今回の工事で工夫している点
本マンションは回廊式となっていますので、縦割りの工区ではなく横割りの工区で施工を行っています。連結式ゴンドラを採用すると、工期も長くなり施工金額も上昇することになりますので、今回はレール式ゴンドラを連結している様な状態で使用する「連結風ゴンドラ」で施工を行っています。このことで、施工するバルコニーの外部にゴンドラを設置することにより、養生をより厳重に行い塗料飛散対策及び転落・飛来落下対策を行うことが出来ます。ゴンドラの養生方法も種々検討しましたが、養生シートを大きくすると重量が増し作業員の定員が少なくなるので、ゴンドラの部材を鉄製からアルミ製にするとか、養生の密閉性と作業効率を比較して現状のゴンドラと同等の養生高さに決定致しました。
今回の工事は盛替え無しで全吊り・全周吊り込みで対応しています。着床ステージを3階にして、作業員の乗降もスムーズに出来る様にしています。また、充電式ゴンドラを採用することにより、ケーブルを無くし作業時間外の壁面への接触も無くす事が出来ました。
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【ザ・シーン徳川園大規模修繕工事の連結風ゴンドラ】
前回の第1回目大規模修繕施工時に、アルミ手摺の塗装を行いました。まだ健全だったのですが、次回までの大規模修繕工事サイクルと期待耐用年数を検討した結果、今回も同様に、塗装工事を実施しました。付着力及び塗装の質感が良くなる様に、試験施工で付着力の健全性を確認してから作業を行っています。
現場の看板シートにカーボンニュートラル・SDGsを意識した、四季に対応した掲示看板を設置しました。簡単なクイズ形式で回答をQRコードで確認できる看板を採用することにより、学生の皆さんに興味を抱いて頂いています。
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【SDGsを意識した、四季に対応した掲示看板】
前述したトリオシステムをオプション(専有部有償)工事にて、取り外した後のバルコニー床面防水の段差対策です。新築時の防水・前回の大規模修繕工事でしっかりした施工を行っているので、かなりの段差が発生していました。
天井塗装の吹付材のパターン合わせに留意しています。四隅コーナー部の床面が漏水し、天井が模様パターンから剥離している状態となっています。超高層マンションの特性として、風散対策を考え吹付工事が出来ませんので、ローラーにてパターンを復元するのに苦労しました。
廊下塗装の養生にも留意しています。本マンションは内(中)廊下タイプとなっています。天井及び壁面は塗装で、床面はタイルカーペットになっています。天井及び壁面の塗装の際、床のタイルカーペットをパンチカーペットで養生を行います。パンチカーペットで養生を行うのは、施工後のノリが残りにくい点にあります。しかし、パンチカーペットで養生を行うと、宅配便の台車等でしわ・段差が生じ、居住者様のつまずきの要因になりますので、作業員・職員が一丸となって、都度戻す作業を行っています。
作業は、固定した作業員で行えるような作業段取り、手戻りが無い検査体制を構築しています。検査体制は、現場係員検査、小澤品質管理員が行う社内検査、その後監理者検査、管理組合検査となります。
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【エレベーターカゴの養生状況】
4. 今回の工事で苦労している点
本マンションは回廊式となっていて、バルコニーの軒天井、外壁及び手摺が塗装となっています。タワーマンションで塗料の飛散等が起こりやすいので、特に留意しています。天井面の塗装には、特殊なマイクロファイバー製のローラーを使用することにより塗料飛散の低減化を図っています。
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【アルミ手摺の塗装仕上がり状況】
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【飛散低減の為に使用したマイクロファイバー製のローラー】
また、居住者様のセキュリティ、各戸のプライバシーにおいて、お客様がご安心できるような態勢で工事を行っています。現場に入場する職員・作業員は事前に顔写真を撮影してから登録を行い、登録した職員・作業員のみが入場できる、当社独自特許のフェイス・パス・カムを通用口に設置し、管理を行っています。また、隔て板は、取り外しすることなく、プライバシーを確保できるように、下部をチャック式に加工し、作業中は開けて、作業後は閉めて毎日の作業を行っています。
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【職員・作業員の入場状況、登録者のみ入場可能】
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【隔て板の加工状況、作業中状況】
5. 工事竣工までの意気込み
とにかく無事故無災害で現場を完工させたいと、現場施工を準備する段階から今も思っています。特に塗料飛散に関しての対策は、風速計を屋上に設置して施工の判断をするのではなく、実際に作業を行う現地でハンディタイプの風速計を用いて風速を確認して、塗料飛散事故等を無くしたいと思っています。この手法は、直前のタワーマンションの大規模修繕工事でも行いました。階数:屋上・中層階・低層階、各面:東西南北面でも風の状況が異なりますので、現地で判断する様にしています。
6. 最後に
中部地区で最も歴史のあるタワーマンションなので名古屋市の住宅局及び他団体から大規模修繕中に現場見学を頂いています。中部地区のタワーマンションとしてランドマークとなっていますので、中部地区のマンション修繕の見本となる施工で、お客様にご満足頂ける工事をご提供出来ればと思っています。
現場代理人の安藤所長は、直前の現場は中部地区で最も高いタワーマンションの大規模修繕工事を担当し、今回は中部地区で最も歴史のあるタワーマンションの第2回目大規模修繕工事の担当となりました。
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■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
(2025年2月10日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。