毎週月曜日更新

毎週月曜日更新

タグ一覧

マンションの騒音トラブル! 管理組合ができることは?

マンション 騒音

新型コロナウイルスの影響によって在宅時間が長くなったことで、このところ、いわゆる「巣ごもり騒音」に関する苦情が増加しているようです。「巣ごもり騒音」とは、在宅勤務が浸透することで近隣からの騒音が増えたり、今まで意識していなかった音が気になったりすることをいいます。音の感じ方は人によって違うものの、マンションでは、ちょっとした生活音が騒音トラブルに発展することもあります。それでは、マンションの住民から管理組合理事会に騒音トラブルに関する相談があった場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

今回は、マンションにおける騒音トラブルの事例や仮に住民から相談を受けた場合の管理組合理事会による仲裁の仕方、騒音トラブルを未然に防ぐための対策について紹介します。

目次
1. マンションの騒音トラブルが増えている?
2. 苦情や相談があったらどう対応すればいい?
3. 生活音を騒音トラブルに発展させないために

1. マンションの騒音トラブルが増えている?

マンション 騒音

国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査」では、全国のマンションの55.9パーセントで住民トラブルが発生し、トラブルの具体的な内容としては「生活音」が38パーセントと最も多くを占めていました。

加えて、コロナ禍では多くの人が外出を控えることが増えて、在宅時間が長くなったことによる「巣ごもり騒音」をはじめ、騒音についての警察への通報が増加傾向にあるようです。警視庁によると、緊急事態宣言が発出されていた2020年4月、東京都内では騒音に関する通報が1万7000件を超え、前年同月の38パーセント増となりました。これは、ひと月あたりの騒音についての通報件数としては過去5年間で最多です。

騒音トラブルの原因としては、「在宅勤務中のオンライン会議の音」や「休校中の子供が動き回る音」についての苦情が多いようです。

2. 苦情や相談があったらどう対応すればいい?

住民間の騒音トラブルは基本的には、当事者同士で解決するべきものですが、当事者同士で話し合っても解決できない場合などに、管理組合理事会に相談が寄せられることがあります。その場合、理事会は、客観的な判断をもとに解決を目指すことが求められます。仲裁をする場合は、次の対応例を参考に進めましょう。

1) 本当に騒音があるのか、また騒音の度合いについて事実確認する。
・当事者の言い分を聞く。
・音の大きさを測定する(※)。
※市区町村によっては、役所の環境課などで騒音計を借りることができる。借りられない場合は、スマホの騒音計アプリなどを利用する。また、騒音の基準値については、環境省が定める下記基準などを参考にする。
環境省「騒音に係る環境基準について」

2)近隣の住民にも、実態について聞き取り調査を行う。

3)1)、2)の調査の結果、騒音発生の事実があり、専有部の使用方法について管理規約や使用細則の違反があったとしても、まずは掲示板や回覧板で騒音に対する注意喚起をするなど、できるだけ穏便に是正を求める。

4)それでも改善されない場合、管理規約や使用細則に違反する事実があれば、理事会の決議を経て理事長から是正の勧告をする(標準管理規約に準じている場合。独自規約の場合は、その規定にしたがって判断する)。管理規約や使用細則の違反がない場合は、1)で調べた騒音測定結果などを元に自治体の環境課や専門家に相談する。

3. 生活音を騒音トラブルに発展させないために

マンション 騒音

騒音トラブルを未然に防ぐためには、日常生活で発生する「音」について、管理規約や使用細則でルールを定めておくことが重要です。あまり細かく設定しすぎても生活が息苦しくなるという側面もありますので、ルールを決める際には住民全体でよく協議した上で、設定しましょう。以下に定めるルールの例を紹介します。

・時間のルール
楽器を演奏してもよい/してはいけない時間帯を決める。また、日常的に1日○時間を超えて演奏する場合は防音措置を義務づける、など

・場所のルール
ピアノなど固定の必要な楽器やオーディオ機器は、窓際や隣戸との壁際を避けるなど、設置場所を制限する

・音量のルール
住民の意見をもとに、テレビや楽器などの最大音量を決める

・その他のルール
楽器の演奏中は窓やドアを閉め、カーテンを引くなど

階下に響く子供の足音など、管理規約や使用細則で定めるのがむずかしいものについては、子供部屋にはカーペットを敷くなど、生活ルール集をつくるのもよいかもしれません。住民の意見を聞きながら、管理組合理事会が中心となって、対策を検討することで、住民の「音」に対する意識も高まっていくのではないでしょうか。

<参考資料>
NPO集住センター「マンション管理組合の理事になったとき最初に読む本」pp58-59、主婦と生活社

■あわせてお読みください。
・マンションでできる防音リフォーム 快適なマンションライフのために
・マンションライフを快適にするカーペットの工夫とは


《この記事のライター》
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。
※建装工業株式会社公式HPはこちら

(2021年8月30日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

おすすめコンテンツ