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管理組合に聞く 管理組合運営を「自分ごと」として捉える 〜恒陽藤沢マンション〜 後編
前回に引き続き、『恒陽藤沢マンション』管理組合の皆さんにお話をうかがいます。建装工業では、2013年の大規模修繕工事に続き、2021年の屋上防水および外構改修工事も施工させていただきました。建物管理に取り組んでこられた経験を元に、工事に際しての管理組合の取り組み方や、他のマンション管理組合へのアドバイス、今後の展望などをご紹介します。
こんな人におすすめ
● マンションにお住まいの方に
● マンションの管理組合運営に興味のある方に
● マンション理事会活動に参加される方に
(聞き手:建装工業 MR業務推進部 大塚麻里絵)
※2013年の大規模修繕工事では恒陽藤沢マンション大規模修繕工事の現場担当者として工事管理に従事していました。
前編記事はこちら
『管理組合い運営を「自分ごと」として捉える〜恒陽藤沢マンション〜 前編』
目次
4. 施工会社にはどのように接していったらいいのか
5. 主体的に取り組まれた工事にはどのようなものが
6. 管理組合運営維持のための取り組み
7. 他の管理組合さんにアドバイス
8. 恒陽藤沢マンションの今後の展望
4. 施工会社にはどのように接していったらいいのか
2021年に建装工業で施工した屋上防水工事
エキスパンションジョイントからの漏水も解消されました
建装工業に限らず、様々な施工会社に工事を依頼されていると思います。とても紳士的な対応をいただきまして、施工会社とのやり取りにも慣れておられると感じました。何かポイントとしている事項はあるのでしょうか。
平沼:工事計画の時、設計事務所と十分打合せをして管理組合の希望を反映していただいています。その後の施工会社選定は、金額だけでなく仕事内容なども重視した「総合評価方式」で決めています。基本的に設計通りの見積をいただきますが、それ以外の提案を別枠で出してもらい、設計変更することもあります。
有吉:屋上防水工事でも、笠木の仕様変更はそのようにして実現しました。当初予定していたものよりも、さらに風散しにくい笠木に変更しました。管理組合にとってメリットがあると思う提案は積極的に取り入れるようにしています。
高橋:特に修繕工事では、実際に工事を進めて初めて分かることもあります。それを受けてより良い方向へ仕様変更します。全て最初に決めた通りに行くことはありません。
有吉:施工会社さんとは直接やりとりせず、設計事務所さんに間に入ってもらいます。特に設計変更については、設計事務所とよく打合せをして、金額も含めて確認を受けたのちに管理組合に提案して貰っています。それを認めるかどうかまた会議が必要になりますが、こうした設計変更は、工事の最中には必ず出てくるものだと思っています。
平沼:設計事務所さんだけでなく、私たちも見積書を良く見ています。見積は複数とって比較検討します。また、見積だけでなく実際に工事担当の方に会ってお話を聞くと、それぞれの会社の良し悪しが見えてきます。
それと、見積依頼時には、値段交渉の無駄を省くため適正な金額の見積り提出をお願いしています。施設計画委員会でも工事の検査をするので、施工の不良個所などに対して交換・補修の対応をしてもらうこともあります。しかし、工事が始まれば「プロの皆さんにお願いしてやってもらっている。仕事の邪魔はしない。」と良い仕事をしてもらえるよう心の中で応援しています。
5. 主体的に取り組まれた工事にはどのようなものが
2013年に手摺と窓面格子が、2014年にサッシが新しくなりました。
大規模修繕工事が終わってから、2015年の竣工後2年目のアフターメンテナンスに訪れた時にサッシが更新されていることに気づきました。これも大掛かりな工事だったのではないでしょうか。
有吉:理事会・施設計画委員会主導で、断熱性能の高いサッシへの更新工事を、助成金を利用して行いました。敷地境界の外構工事や、駐車場の区画し直し工事もやりました。
高橋:防水や塗装などの工事、建築確認が関係するような工事は、かなり専門的で難しいので、これは設計事務所を通して施工会社さんにお願いしています。2013年の大規模修繕工事や、今回の2021年の屋上防水工事はそのような考えに基づいています。
竹内:他にも、共用部の照明器具交換工事も主体的に行いました。LED化により、電気代は年間10万円以上安くすることが出来ました。
平沼:こうして理事会・施設計画委員会が主体的に動いて工事を実施するのも、年齢とともに難しくなってきた部分があります。工事に精通された方がいたからできていましたが、そうした専門的な部分まではなかなか次の方に引き継ぐことが出来ません。管理会社などの外部に委託することも出てきました。
6. 管理組合運営維持のための取り組み
2021年の外構工事で新しくなったゴミ置場
夏祭り・バザーでは常設のフックを利用してテントを張り大活躍する予定です
お住まいのマンションの管理組合運営を、ご自身に直接関係があること、つまり「自分ごと」として捉えられている方が多いように感じました。このような意識の醸成や積極的な管理組合運営を維持するために、何か取り組んでいることはありますか。
平沼:理事会、顧問会議、住民代表会、施設計画委員会、自主防災会の組合運営組織と各種サークル活動があります。活動する人は、複数の組織に所属・参加しています。以前はお祭り、映画上映など行っていましたが、コロナ禍になってからは自粛し、屋外で植栽や土木作業を行って汗を流しています。
お祭りとして開催していた夏祭りと冬のバザーは、準備のために1ヵ月ほどかかりますが、その為に皆さんで集まることも含めて楽しめるイベントです。目的意識がはっきりしているものに対して、夢中になって楽しみながら取り組めるということなのだと思います。今は開催できていなくて残念です。
有吉:麻雀サークルや囲碁サークル、お茶の会もあります。それぞれ有志が時間を決めて集まって楽しんでいます。年配の方も、自宅にこもらずお話できる機会を設けるという意味合いもあります。
平沼:マンション全体で、新しい居住者の方が入ってこられるということは年に1〜2件程度なので、こうしたサークル活動に激しい新陳代謝はありません。
吉田:私はこのマンションで生まれ育ちました。2代目という事になります。
平沼:これからは、吉田さんのような世代の方が増えていくのではないかなと思っています。残念ながら、管理組合運営やサークル活動などに無関心で、自己権利だけ主張する人が最近目立つという問題もあります。管理費を払うだけで義務を果たしたと思われてしまう方も、中にはいらっしゃいます。皆さんの活動があってこそ運営されていることは、実際に参加してみないと伝わらないので、ぜひ参加してほしいところです。
7. 他の管理組合さんにアドバイス
2021年の工事で新しくなった自転車置場
自転車の大型化に合わせてゆったりと置ける配置に変更しました
管理組合運営に悩まれている他の管理組合の方へ、アドバイスできることはありますか。
有吉:管理組合活動を積極的にやっていこうとなった時に、そのメンバーの方々がどのような年齢構成になっているのかということは非常に大切だと思います。それによって活動内容も変わってきます。先のことを考えると、若い方にも積極的に参加してほしいので、そうした声掛けは行うようにしています。特に、これから建替えも考えていこうとなった時には、建替え後に実際に住んでいく若い方々にも参加してもらって、意見を反映させていく必要があります。
平沼:各マンション管理組合とも、悩みがないところはないと思います。理事会運営・資金面・修繕・法的問題など問題は多いです。特に法的問題での弁護士依頼などは、日常ではハードルが高いと思っていました。当マンション管理組合では長年繰越されていた問題の解決を弁護士に依頼しました。お金は掛かりますが問題解決のためにはこれが近道のようです。「まずはやってみること」です。
有吉:取り組み方として、問題を長く放っておかないということも大切です。
平沼:他にも、管理費の長期滞納というのも、他のマンション管理組合で問題になる事項ではないでしょうか。当マンションでも、問題になったことがあります。督促をするにも労力がかけられているので、費用が発生しています。「遅れても最後に支払えば良いだろう」と考えられてしまっても困るので、滞納に関して期間を定めて段階を踏んで対応することを、管理規約に明記しました。毅然とした対応をする理事会・管理組合だと示すことも重要です。
高橋:理事会としても、管理会社には解決したい問題について申し入れを行わなければなりません。管理会社さんは、言われていないことまでやってくれる訳ではありませんからね。
8. 恒陽藤沢マンションの今後の展望
敷地内に住民代表会で設置している巣箱
春にはシジュウカラが子育てにやってきます
管理組合として、今後の展望をお聞かせください。
竹内:今後を担う若い皆さんには、このマンションの過去の経験を繰り返さないよう、貯まったお金を上手く使っていく計画を立てほしいと思っています。マンションでは様々な工事が行われていきますが、安ければいいというものでもないので、工事内容をきちんと見て、専門家の力も借りながら適切な判断を重ねてほしいと思っています。
平沼:居住者の高齢化に伴う管理組合業務の担い手不足が深刻な問題です。特に、理事のなり手が不足しています。理事になってもその役割を果たせない方をそのまま理事に据えることもできないので、理事の選出に苦労しています。同じ方が複数回理事を経験されていることもありますが、回数が多くなり過ぎると良くありません。そこで、同居の息子さんに理事になっていただくなど出来ればいいなと思っています。一部の若い区分所有者の方に負担が偏るのも問題です。ご自分のお仕事が忙しい盛りですので。
吉田:本日参加の皆さんの中では、私がいちばん若年ですね。有吉さんは同じ階段に住むご近所さんですが、何度か理事を経験されているということだったので、今度は私が理事になりました。
平沼:出来なくなった業務は外部委託する必要が出てきています。施設計画委員会の活動では、若い方も入って来ているとはいえ、全体的な高齢化は進んでいます。例えば工事の検討などは、管理組合がかなり主体的に取り組んだ経緯があるので、以前と比較すると設計事務所や管理会社に委託することが増えると思います。実際に支出が増えたこともあり、将来のためにも管理費等は値上げしました。
高橋:今年で築年数45年になるので、建替えも視野に入れたいと思っています。建替えをするかどうか考えておかないと、修繕工事もどこまで力を入れてやったら良いのか決められなくなってしまいます。また、建替えに興味を持っておかないと、それに関わる法改正などの情報も入手しにくくなってしまいます。
有吉:長期修繕計画も、大きな転換点に差し掛かっています。今は今後30年の計画立案を設計事務所にお願いしているところです。建替えも視野に入れた修繕計画ですが、合意形成には時間がかかると思うので、慎重に少しずつ進めていきたいです。
平沼:10年、20年、30年後の「マンションライフプラン」が早急に必要ですね。建替えの話はまだ最近持ち上がったばかリで、将来できたらいいなという段階です。まだまだこれからですが、もし実現するのであれば、建替え直前まできちんと修繕を続けて、建物を出来るだけ綺麗な状態に保ちたいですね。
大塚:建物を管理される上で、工事に関しても非常に積極的に取り組まれてきたことが良く分かりました。弁護士への相談については、全てのマンションが経験することではないので、他のマンション管理組合さんにも参考になる事例です。自分が改修を担当したマンションが解体されてしまうと考えると少し寂しくもありますが、建替えが実現した時には、またぜひ見学にお邪魔したいと思います。この度はありがとうございました。
前編記事はこちら
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