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窓やベランダからの子どもの転落事故。マンションからの転落はヒヤリ・ハットへの対策を!

マンション 転落 子ども

絶対に防ぎたい子どものベランダ・窓からの転落事故。東京消防庁が2022年2月に公表したデータによれば東京消防庁管内において、2020年中の乳幼児のベランダ・窓に関する事故数は、前年より7件増加し、16人が救急搬送されており、コロナ禍となって増加した日常生活の事故として“転落事故“が挙げられています。
今回は、ベランダ・窓からの転落事故の事例や特徴、ヒヤリ・ハットなどを説明します。子どもの性格や身体能力、成長に合わせた対策を行い、転落事故から子どもを守りましょう。

目次
1. 初夏と初秋に増加する子どもの転落
2. 子どもが転落しやすい理由
3. 窓やベランダからの転落防止には、リスクを排除するための徹底的な環境整備を!
4. 重大な結果につながる転落。ヒヤリ・ハットを放置しない

初夏と初秋に増加する子どもの転落

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新型コロナウイルスの流行にともない自宅で過ごす時間が増えた結果、日常生活で起きる事故として「乳幼児のベランダ・窓からの転落(墜落)」が増加したという報告があります。東京消防庁の調査によると、2020年中にベッド・階段からの転落や窓・ベランダからの転落、遊具からの転落など「落ちる」事故で救急搬送された人のうち、年齢層別(5歳単位)では0?4歳が最も多く搬送されています。(図1)
このことから、転落事故には乳幼児が多いことがわかりますが、なかでも乳幼児のベランダ・窓からの転落事故が増加したデータがあり、東京消防庁はコロナ禍における日常生活事 故として注意を呼び掛けています。※1

※1 住宅等の窓・ベランダから子どもが墜落する事故に注意!

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図1: 年齢層別の救急搬送人員(落ちる)
引用:緊急搬送データから見る日常生活事故の実態 令和2年(東京消防庁)

●ベランダや窓からの転落事故の傾向
※消費者庁の転落事故に関する発表※2による
・年齢では、建物からの転落事故は3〜4歳が多い。
・転落事故が発生する時期は、 初夏(5〜6月)と秋(9〜10月)が多い。
・転落事故により救急搬送された件数では「窓からの転落」が多く※2、転落による死亡事故では、「ベランダからの転落」が多い※3。
・転落事故のうち男児が占めている割合は約7割と、女児の2倍ほど高い。※4

※2 窓やベランダからの子どもの転落事故に御注意ください!
※3 人口動態調査 (平成26〜30年 厚生労働省)
※4 東京都商品等安全対策協議会報告書

●ベランダや窓からの転落事故の状況
東京都商品等安全対策協議会報告書(2017年発表)によると、子どもが事故直前に何をしていたか不明である割合が82%を占めており、大人が見ていない隙に転落事故が発生しています。なお、転落事故の状況には次のようなものがあります。

・窓枠に座る。
・台や突起など足場になるものに登る。
・物を取ろうとした。
・網戸に寄り掛かる。
・ベランダや窓で遊ぶ。
・家族や来客の見送り

「網戸に寄りかかったら網戸が外れた」「ベランダの柵にある飾りに足をかけて登った」「外にいる保護者をベランダからのぞき込んで転落した」などのケースが報告されており、事故が起こる前の段階から対策をしておく必要があることがわかります。

子どもが転落しやすい理由

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柵を乗り越えることが難しい子どもが、なぜ転落してしまうのでしょうか。子どもが転落事故を起こしやすい理由として、身を乗り出した際、頭の重さによって転落しやすくなることが挙げられます。

例えば、身長が110cm以下である子どもと、110cm以上と定められている手すりを想定してみましょう。子どもの身長が低いから安全だと思っていても、70cmの高さをよじ登った子どもは体の半分以上が手すりの上に出てしまいます。2003年に行われた、4〜6歳児を対象とした台のぼり実験では、60cmまでの高さなら身長105cm未満の4歳児でも登ることができると報告されています。70cmの台なら、4〜6歳児の8割以上の子どもが登れてしまうのです。
また、10mmほどの厚さがあれば、5歳以上の子どものほとんどが足を引っかけられてしまうという実験結果があり、突起に足を引っかけて次の高さの台に移動することも容易にできてしまうことがわかります。身長より高い手すりを上半身が超えることも起きうることなのです。

このような状況で身を乗り出し、重い頭を手すりの外側に出すと体のバランスが崩れ、転落事故に結びついてしまいます。

さらに、閉めていた鍵や窓を開けてしまったり、踏み台となるものを持ち込んだりと、大人が想定していなかった行動をとることも考えられます。

しかし、子どもから一瞬も目を離さないでいるというのは現実的ではありません。そのため、転落事故防止への対策が必要なのです。

窓やベランダからの転落防止には、リスクを排除するための徹底的な環境整備を!

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転落事故を引き起こさない対策として、リスクを排除するための徹底的な環境整備が重要になります。
まずソファに登り、そこから次の足場に移動する、といったようにソファや引き出しのような登りやすい家具は、それそのものが窓から遠くても、子どもが次の場所への移動手段のひとつとして利用する可能性があります。また、子どもの力で動かせるものについても窓やベランダから距離があっても足場にしてしまう可能性を考える必要があります。

●転落防止のための窓・ベランダの環境整備の例
・窓やベランダの近くに足場になるものを置かない。
・窓のそばにソファや棚などを置かない。
・ベランダを遊び場にしない。
・窓を大きく開くことを制限するグッズや補助錠を導入する。
・ベランダに通じる部屋にベビーゲートを設置する。
・ベランダへの設置がやむを得ないものは、手すりから70cm以上離して設置する。

消費生活意識の調査では、窓の開閉を制限するグッズや補助錠について、約40%の人が「知っていても使っていない」と答えています。

また、東京都が平成31年に発表した、自宅とは異なる住まいでのヒヤリ・ハットの調査※5によると「ベランダ・ウッドデッキでの危害及びヒヤリ・ハット経験」では転落が最も多くなっています。小さな子どもが日常を過ごすことを想定していない場所で対策が不十分となる危険としては、親族の家や宿泊施設、上の子の学校に下の子を連れて行くなどさまざまなケースが想定されます。「自宅には柵を設置しているが親族の家には柵がない」「普段と違う景色をベランダから見たがった」といった事例もあるように、外出時も注意が必要です。

※5 平成 30 年度ヒヤリ・ハット調査「帰省先などの自宅とは異なる住まいでの乳幼児の危険」調査報告書

重大な結果につながる転落。ヒヤリ・ハットを放置しない

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転落事故を防ぐためにもうひとつ大切なことは、普段の生活の中で起こるヒヤリ・ハットを放置しないことです。
ヒヤリ・ハットとは、危ないことが起こったが、重大な事故には至らなかった事象を指します。これは『1件の重大事故の背後で29件の軽微な事故が起き、重大な事故に直結する「ヒヤリ」とする出来事が300件ある』というハインリッヒの法則で、重大な事故を防ぐためにはヒヤリ・ハットの再発を防止することが大切だという考え方です。

子どもに起こるヒヤリ・ハットは「我が子の考え方や行動の癖が現れて起こる危険」であり、そのヒヤリ・ハットを放置せずに対策を取ることは、我が子の危険を減らすことにつながるでしょう。

東京都商品等安全対策協議会の報告では、ベランダでのヒヤリ・ハットを経験した性別は男児が65%と多く、転落事故の傾向とも一致します。(図2)
また、年齢別の調査では2歳が約30%、3歳児と1歳児が20%強となっています。(図3)

具体的には、「布団を干していたときに子どもが手すりの下をくぐろうとしていた」「ベランダでコンテナボックスに登っていた」といったようなヒヤリ・ハットの報告があり、「鍵を自分で開けて1人でベランダに出ていた」という回答の中には1歳児も含まれています。
また、「ベランダには出ていなかったが子どもが鍵を開け閉めしていた」「出窓のそばにあるベッドで子どもが布団を積み重ねて登っていた」「子どもがイスに登ったあとさらにテーブルに登ろうとしていた」などもヒヤリ・ハットとして認識する必要があるでしょう。

ヒヤリ・ハット経験時にベランダ・窓付近にあったものとして挙げられているものは、次のようなものがあります。
・水槽
・布団やベッド
・足台
・エアコンの室外機
・ベランダの柵に設置されている物干し
・ゴミ箱
・古新聞
・バケツ
・プランター
・コンテナボックス
・テーブルや椅子
・石油ポリタンク
・自転車や三輪車
・ビニールプール
これらのものをベランダや窓付近に設置されているご家庭は、ご注意ください。

今回は、子どもの転落事故について、事故発生の流れや発生しやすい時期、対策方法などについてご紹介しました。

窓やベランダからの子どもの転落事故の防止対策は、ヒヤリ・ハットを放置しないことが大切です。
子どもの性格や身体能力、成長などを考慮し、ご家庭の環境に合わせた対策を講じて、転落事故から子どもを守りましょう。

■あわせてお読みください。
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■この記事のライター
熊谷 皇
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
千葉県出身。鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境(温熱環境性能、住宅の省エネ性評価等)。住宅の省エネ基準検討WGの委員、建築環境省エネルギー機構・日本建築センター・職業能力開発総合大学校等の講習会講師の経験を持つ技術者。ライター。

(2023年5月15日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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