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マンションの各種保険の種類と特徴は? マンションに必要な保険や補償内容を見直しする際のポイントとは?
マンションの共用部分は、専有部分と同じく大切な財産です。
しかし、ほとんどの区分所有者はマンションの保険にあまり関心がないのが実情です。
これは、普通に生活していると管理組合用のマンション保険に接する機会がほとんどないことと、保険料が管理費の中から支払われているため実感がないからだと考えられます。
今回は、マンションに保険が必要な理由とその種類、そして保険内容を見直す際のポイントについてまとめました。
目次
1. なぜマンションに保険が必要なのか?
2. マンションの各種保険(管理組合用)
3. 保険内容の検討ポイントは?
4. 保険内容の見直しポイントは?
5. まとめ
なぜマンションに保険が必要なのか?
マンション管理組合の第一義は「マンションを管理・保全し、資産価値を維持する」ことです。
災害など、不測の事態が発生した際には迅速に管理体制を確立する必要があるため、事前に保険に加入することが重要です。
保険に加入せず修繕積立金から支出しようとすると、予定していた大規模修繕が計画通りにいかず、資金不足から将来的にマンションの資産価値の下落につながるおそれもあるのです。
例えば、無保険状態のまま共用部分で火災が起きた場合、修繕積立金から支出するとします。この場合、総会決議が必要になるので、総会開催や決議までには時間を要し、復旧が進まないことが想定されます。
ほかにも、当事者以外は困らない問題などは合意形成が得られにくいため、復旧が遅延したり、居住者同士でトラブルになるケースもあります。
このようなトラブル回避のためにも保険が必要とされるのです。
マンションの各種保険(管理組合用)
管理組合用のマンション保険と特約について、共用部分と専用部分に分けて説明していきます。
いざ保険に加入しようとしても、保険会社によって名称や条件、補償内容、保険料などが異なるため、検討する際は注意が必要です。
特約をつけないと補償対象にならないケースもあるので、内容をよくご確認ください。
●共用部分の保険
【マンション総合保険】
「マンション火災保険」「管理組合総合保険」などと呼ばれる保険です。
火災、落雷、破裂・爆発、風災、雹(ひょう)災、雪災、建物外部からの衝突等による損害を補償します。
特約を付けることによって水災や盗難、給排水設備の事故による水濡れや、突発的な破損事故など、各種損害をカバーすることができます。
給排水設備自体に生じた損害や経年劣化による損害は対象外となっている場合があるため、注意が必要です。
●共用部分の特約
マンション総合保険のオプションとしてつけられる特約について説明します。
こちらも保険会社によって名称や条件、補償内容、保険料などが異なるため、検討する際には内容をよくご確認ください。
【水災補償特約】
台風、暴風雨、豪雨等などの水災による事故で損害が発生した場合に補償します。補償対象となる条件など、よくご確認ください。
【水濡れ損害補償特約】
給排水設備で生じた事故などによる共用部分の水濡れ損害を補償します。
給排水設備自体に生じた損害は補償されません。
【水濡れ原因調査費用補償特約】
水濡れ事故の原因調査に必要な費用を補償します。通常、水濡れ損害補償特約などとセットで契約します。
【臨時費用補償特約】
災害や事故などで損害を受けた場合、契約の内容次第では火災や落雷等の被害でも、損害保険金とは別に支払われます。
臨時費用保険金の算出方法など、詳しくは内容をよくご確認ください。
【破損・汚損損害等補償特約】
不測かつ突発的な事故による共用部分の破損・汚損等の損害を補償します。通常、機械設備は対象に含まれないですが、特約で含めることができます。
例えば、何者かによって玄関入口ドアが壊された、または過電流によってエレベーターの部品が破損した場合などです。
【失火見舞費用補償特約】
保険の対象から発生した火災、破裂・爆発により他人の所有物に損害が生じた場合の見舞金等の費用を補償します。
保険会社によって名称や補償条件が異なるため、内容をよくご確認ください。
【施設賠償責任補償】
共用部分の欠陥やマンション管理業務の偶然の事故によって、他人の財物を損壊、または負傷させたときに法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる特約です。条件によって保険金が支払われないケースもあるため、内容をご確認ください。
【個人賠償責任包括契約に関する特約】
専有部分の使用・管理に起因する偶然な事故や、区分所有者やその家族が偶然の事故で他人に怪我をさせたり、他人の物を壊すなど、法律上の賠償責任を負担する際に被った損害を補償します。
「建物管理賠償責任補償特約」や「管理者賠償責任保険特約」と合わせて契約することで、「水漏れ事故」などによる区分所有者同士、または管理組合と区分所有者間での損害賠償責任等のトラブル回避にもつながります。
【地震保険】(共用部分)
地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害を受けた場合に補償します。
地震保険は単独では加入できず、管理組合用マンション総合保険とセットで加入しなければなりません。
地震保険は火災保険等とは異なり、損害による修理費用(復旧費用)を支払う保険ではなく、損害の程度に応じて一定額が速やかに支払われます。
保険内容の検討ポイントは?
管理組合は保険加入を検討するにあたり、まずマンションの現状や補償内容を把握する必要があります。これは、マンションの現状や環境によって必要な補償が異なるからです。
例えば、自治体が発表しているハザードマップは洪水時や土砂災害などの被害予想がされているので、「浸水想定地域」「土砂災害警戒区域」のほか、いざという時のために「避難所の場所」や「給水ステーション」なども一緒に把握しておきましょう。
このほかにも、以下の検討ポイントを参考にしてください。
・修繕や事故の履歴確認:水濡れに関する特約、個人賠償や管理者賠償などの特約
過去の修繕記録や事故履歴などから、建物や設備等の弱い部分を把握することをお勧めします。特に、水漏れ事故などの修繕記録や事故履歴をあらかじめ確認できるとよいでしょう。
・築年数が30年を超えている:水濡れに関する特約
築年数が高くなると設備の破損が増加します。特に水漏れ事故は、築年数が30年を超すと発生率が高くなります。
・耐震や免震などマンション構造の確認と地震保険加入の検討:地震保険特約
耐震や免震構造で造られているマンションといっても、損壊がまったく出ないとは限りません。
地震保険は速やかに一定額が支払われるため、すぐに修繕できるメリットや区分所有者への費用負担も軽減されるので合意形成もスムーズに進みます。
・区分所有者の年齢・家族構成などの特性:賠償責任に関する特約
高齢者や子どもなど年齢や家族構成、賃貸化率によって、区分所有者同士、また区分所有者と管理組合とのトラブルが増える傾向にあります。
・マンション周辺の環境と設備や装置の配置確認:機械設備に関する特約
マンションの立地が河川に近い、または水はけが悪いなど、大雨や洪水によるリスクが高い環境であれば、エレベーターなどの電気室の場所確認や機械式駐車場がある場合には浸水リスクに備えた保険が必要になります。
・敷地内に道路に面した崖地があるか:個人賠償や施設に関する特約
マンション敷地内に崖地がある場合、斜面が崩落すると区分所有者や管理組合に損害賠償責任が生じる可能性があります。
保険内容の見直しポイントは?
保険料は管理費から支出することから、万が一の時に現在の補償で十分なのか、また保険料の無駄があれば契約内容を見直すことも管理組合の重要な仕事となります。
以下は保険内容を見直す時のポイントについてまとめました。
・契約更新前に複数社の見積もりを比較
契約更新前に複数の保険会社から見積もりをとり、保険料や補償内容、また割引などを確認し、比較検討します。
保険会社によって保険料や特約の補償内容など異なるため、保険比較サイトや損害保険代理店などに相談することをお勧めします。
・重複契約(特約)の排除
特約には重複している補償内容もあるので、管理組合としての対応を検討する必要があります。特に個人賠償契約の特約は、個人契約している区分所有者との不公平の是正という観点から昨今では加入しない組合もあります。
・保険期間の見直し
保険料は3年または5年の複数年契約に更新することで割引されます。
また可能であれば一括で支払うことで保険料をかなり軽減できます。
保険料軽減に向けてこれらの検討も有効となります。
・適切な管理による保険料の割引
給排水設備の保守状況や計画的な修繕工事の実施によって、そのマンションが優良物件として認められると「優良物件割引」が適用され保険料に反映することができます。
優良物件割引が適用されると長期的な保険料の削減にもなるため、修繕工事を早めることで評価を上げることも可能です。
・付保割合と自己負担額(免責金額)の見直し
付保割合とは、建物の評価額に対して設定する割合を意味します。
修理履歴や事故歴、そして財政面の余力を考慮しながら、適切な割合を検討し共用部分に対する付保割合を変更することも、保険料を下げるポイントです。
安くしようとすると付保割合は小さくなり保険料も安くなりますが、いざ損害が発生すると保険金だけではカバーできないため、保険本来の機能が期待できません。
目安として、多くのマンションでは共用部分の評価額に対し、30〜60%の付保割合で契約されています。
また、自己負担額(免責金額)を高く設定すると損害発生時の保険金の受取りが少なくなりますが、保険料を抑えることができます。
少額の損害の場合は保険適用を見送り修繕積立金から支出し、その後の保険料割引の適用を見込むという効果もあります。
まとめ
もともと自然災害が多い日本ですが、台風や豪雨災害、地震など近年増加傾向にあるため損害への備えは不可欠です。
マンション管理組合は万一の災害発生に備え、管理体制を確立し、早期復旧に向けた再建のために有効に保険を活用していく認識を持つことが重要です。
しかし、多くの区分所有者は保険に対して関心が希薄で、大切な共有財産のリスクマネジメントを組合任せにしているのが現状です。
今後は区分所有者のマンション保険への関心や、マンションの資産価値維持の認識を高めるためにも、周知することが重要であるといえるでしょう。
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■この記事のライター
吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者
※建装工業株式会社公式HPはこちら
(2023年11月13日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。