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のぞいてみよう! 施工中現場紹介 〜エスポワール保立/長崎県佐世保市 大規模修繕工事〜

エスポワール保立

施工中の工事現場で活躍する若手現場代理人にフォーカスして紹介するシリーズです。今回は、長崎県佐世保市の傾斜地に建つマンション「エスポワール保立」の大規模修繕工事現場に訪れました。このマンションは、佐世保市の閑静な高台に建築され、広々としたルーフバルコニーからの景色が魅力のデザイナーズマンションです。現場で所長を務めている女性の若手現場代理人、下川さんにインタビューしました。

目次
1. 工事現場の基本情報
2. はじめに自己紹介をお願いします。
3. エスポワール保立大規模修繕工事の特徴を教えてください。
4. エスポワール保立大規模修繕工事で工夫したことを教えてください。
5. これからどのようなキャリアを積んでいきたいと思いますか?
6. 最後に「建装工業のここがいいな。」と思うところを教えてください
7. おわりに(ライターより)

エスポワール保立 大規模修繕工事

1. 工事現場の基本情報

工事名 エスポワール保立 大規模修繕工事
建物規模 RC造 地上9階 住戸23戸
所在地 長崎県佐世保市
竣工年 1992年1月
工事期間 2024年8月 〜 2024年12月
工事内容 外壁塗装、バルコニー壁・天井塗装、バルコニー床防水、シール打替、玄関ドア交換(一部)
話を聞いた人 九州支店 下川さん(現場所長)

2. はじめに自己紹介をお願いします。

建装工業には鹿児島の大学を卒業後に入社し、今年で10年目です。入社時は首都圏MR事業部に所属し関東での工事担当を務め、4年前に九州支店へ転勤し営業部所属となりました。今回私の地元、長崎県佐世保市での工事ということで久々に現場へ出、現場代理人を務めています。

首都圏MR事業部での工事担当時代に特に印象に残っているプロジェクトが2つあります。1つ目は、入社1年目で携わった「トーカンマンション王子」の修繕工事です。ここでは大規模修繕工事と併せて、耐震補強工事、給水システム更新のリノベーションを行いました。そこでは住民の合意形成の難しさや工事中の居住者とのコミュニケーションの大切さを学びました。2つ目は、「鶴川6丁目団地」の団地再生プロジェクトです。ここでは国や自治体の補助事業を活用し、大規模修繕工事、耐震補強、外断熱改修、玄関扉更新のリノベーション工事を行いました。尚、両プロジェクトともクリエイティブリフォーム賞を受賞し、関係者全員で喜びました。これら2つの工事は、いずれも難易度が高い工事でしたが、耐震補強工事、外断熱改修と稀な工事を経験でき、またその工事の難しさを学びました。

九州支店への転勤後は営業業務として、見積もりや仮設計画などの設計・積算業務を経験しました。今はその営業での経験を活かして現場管理を行っています。

今回は私の生まれ故郷のでの現場なので特別な思いで取り組んでいます。居住者の皆様との会話にも入りやすく、地元の人と町に囲まれて、穏やかな気持ちで日々仕事に取り組んでいます。

現場代理人として重要なスキルは、やはりコミュニケーションだと思っています。居住者の皆様や工事協力会社との人間関係を円滑にすることが現場代理人の務めと日々実感しております。

3. エスポワール保立大規模修繕工事の特徴を教えてください。

エスポワール保立は、長崎県らしい風景を楽しめる高台に建つマンションです。佐世保市の街中からも見える位置にありますが、現地に行くには山道を登る必要があります。そのため、アクセスは少し大変ですが、マンションからの眺望は素晴らしく、佐世保の町並みや港を一望できます。

このマンションは、佐世保市初期のデザイナーズマンションとして知られ、丸みを帯びた外壁や鮮やかな色使いが特徴です。また、マンション南面を遮るものがない為、各住戸から佐世保港を一望することができます。

修繕工事の内容は、外壁塗替えやウレタン塗膜防水などの一般的な大規模修繕に加えて、一部の住戸で玄関扉の取替(カバー工法)と庇の新設を行います。玄関扉の交換と庇の新設は、庇がなく雨ざらしで玄関扉が著しく劣化(発錆)している住戸のみ行いました。

工事中は、景観を保つための仮設計画の工夫し、各住戸のルーフバルコニーからの眺望を妨げないよう、ルーフバルコニー内に仮設足場は設けず、屋上側は墜落防止の手摺や親綱を設置、ルーフバルコニー内は立ち馬や脚立で作業とし、居住者がバルコニーからの景色を楽しめるよう配慮しました。

エスポワール保立には修繕員会は設置されておらず、全住人参加型の会議で意思決定を行っています。居住者全員の顔と名前を覚え、皆様とのコミュニケーションを十分にとりながら工事を進めています。

エスポワール保立 大規模修繕工事

マンションから望む佐世保の街並みと湾

4. エスポワール保立大規模修繕工事で工夫したことを教えてください。

エスポワール保立は傾斜地に建つため、複雑な建物形状をしています。23戸が複雑に配置されているので、シンプルな矩形のマンションのように作業動線をまっすぐ設けることができず、建物を5ブロックに分けて作業を進めることにしました。

また、マンションが戸建て住宅の立ち並ぶ住宅街にあり、周辺に駐車場が全くないことも大きな課題でした。エスポワール保立の駐車場は棟間の吹抜下部ピロティ部分にあります。ピロティも修繕工事の対象であるため、一般的には駐車場にも仮設足場必要を設置する必要があります。しかし、周辺には駐車場がないので、この方法は採用できませんでした。

そこで、今回は、駐車場内に仮設足場を設置しない方法を採用しました。具体的には、吹抜け上部にステージ状の作業床を設け、そのステージ上から建物外周の足場を設置する計画としました。

その結果、居住者が工事の為に車を移動する必要がなくなり、さらに管理組合のご配慮で、日中空いている駐車区画を作業員通勤車両の駐車に活用させて頂くこととなりました。なお、吹抜け部分の手摺壁・軒天の塗装は、ステージ足場解体後、テーブルリフト式高所作業車で行う計画です。

23戸の居住者様一人一人にご協力いただき、工事を進めていますので、我々も常に居住者様への気配りを忘れないようにしています。工事内容を事前に通知し、通路が狭くなる場所ではカラーコーンを配置するなど、できる限りストレスなく生活できるよう配慮しています。また、電話ではなく対面で直接お話しすることも多いため、現場事務所の玄関には、私がいるかどうかがすぐにわかる表示をしています。工事中、居住者様の要望をタイムリーに対応することで、ストレスを軽減するよう努めています。

今回の現場で最も苦労しているのは現場巡回です。傾斜地に建つため、最下層から最上層まで移動が大変です。地上での歩行も同様で、足場が複雑に構成されており、効率的な移動ルートを常に考えながら現場を巡回しています。点検時には、点検箇所を計画し、一筆書きで移動するなど、移動を効率化する工夫が必要です。協力会社の皆様も建物の形状や部屋番号を覚えるのに苦労しているため、屋上俯瞰図と地上レベルの配置図を準備して、打合せごとに位置を確認しながら進めています。毎日の巡回は大変ですが、お陰で大分体力が付いてきたと思っています。

エスポワール保立 大規模修繕工事

仮設計画の様子。手前黄色は広いバルコニーにわたるための居住者専用の橋。

エスポワール保立 大規模修繕工事

仮設計画の様子。縦にも横にも複雑な形状の建物であることから足場計画には細心を払った。

エスポワール保立 大規模修繕工事

棟間の吹抜ピロティ部分にある駐車場。吹抜けにはステージ状の作業床を設置した。

5. これからどのようなキャリアを積んでいきたいと思いますか?

現在は現場管理を担当していますが、この現場が完工した後は営業に戻る予定です。現場では、作業の進行に合わせてその日の作業内容を考え、効率化を心掛けています。この経験を活かし、営業に戻った際には、工事現場での作業を具体的にイメージしながら仮設計画を立てることができると思います。特に、現場事務所のサイズ感の重要性を理解し、効率的な作業環境を提供することができると考えています。

これからはCAD、Excel、PowerPointのスキルを高めたいと考えています。これらのスキルは、提案資料の作成やデータ分析、プレゼンテーションにおいて非常に役立ちます。特にCADは現場管理でも役立つため、既に工事監理者の先生に教えていただきながら勉強しています。JW-CADを使用する際のキーボードショートカットや効率的なコマンドの使い方など、少しずつ習得しています。

今回の現場管理を通じて、仮設計画の重要性と難しさを学びました。この経験を活かし、営業でも効率的な現場運営を実現できる「現場目線の計画」を企てられるようになりたいと考えています。

6. 最後に「建装工業のここがいいな。」と思うところを教えてください

建装工業に入社したきっかけは、マンションの維持修繕が今後も必須であり、社会貢献できると感じたからです。入社当初は建装工業について詳しく知りませんでしたが、社内の雰囲気が穏やかで、仕事を「自分で進めていける」点が魅力的だと感じました。

現場代理人として、計画から着工、完成までプロジェクトの工事管理を任されることは、大きなやりがいを感じます。責任が伴いますが、その分、自分の裁量で仕事を進められるのが魅力です。

現場代理人は書類作成が多いですが、この作業を効率化することで余裕を生むことができます。例えば、工事ができない雨の日にまとめて資料作成を進めるなど、無駄のない効率的な活動を心がけています。
建装工業では、受動的ではなく自発的に仕事ができる環境が整っており、失敗しても挽回する力を養うことができます。このような安心して仕事を進めることが出来る環境が建装工業のよいところと私は思います。

7. おわりに(ライターより)

今回は、私の大学の後輩でもある現場代理人の下川さんにインタビューを行いました。下川さんは首都圏で技術的難易度の高い工事現場を経験し、九州で営業を経験し、現在は地元長崎で工事現場を担当しています。営業・工事の両方の立場を交互に経験することで、多くの気付きを得たと語ってくれました。また、エスポワール保立の居住者の皆様とのコミュニケーションを大切にしながら工事を進めている姿勢がよく伝わりました。絶景のマンション「エスポワール保立」の修繕工事が円滑に進み、無事に竣工することを心より祈念します。

エスポワール保立 大規模修繕工事

取材中の様子(一番右が現場所長の下川さん。中央が現場補助担当の川涯さん。)


■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネルギー)。国土交通省住宅の省エネ基準検討WG委員、日本産業規格JIS A 9521(2017)技術コンサル、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校の講師、日本建築ドローン協会(JADA)WG委員を歴任。

(2024年12月16日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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