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ヤモリは暮らしをサポートする益獣? マンションでヤモリをみつけたら?

「玄関やベランダの隅、窓、室内の壁などに、トカゲのような生きものが張りついている!?」そんな経験はありませんか? それは、ヤモリかもしれません。
ヤモリは昔から「家の守り神=家守」と呼ばれ、人の暮らしに適応しながら共存してきました。今回はヤモリの生態や、ヤモリが部屋の中に入ってきた場合の対処法についてご紹介します。
目次
1. ヤモリは「家守」? 実は私たちの暮らしを助ける「益獣」だった
2. マンションに出るヤモリ 水陸両用のイモリとの違い
3. 臆病なヤモリに遭遇したら? 大声や虫取り網で対処しよう
ヤモリは「家守」? 実は私たちの暮らしを助ける「益獣」だった

家の中で見かけるヤモリは、トカゲなどと同じく爬虫類に分類され、ニホンヤモリという種名がついています。漢字では「家守」「守宮」と書き、その名のとおり、災いから家を守る縁起のよい生きものとされてきました。
つぶらな瞳と大きな頭部が特徴で、よく見ると愛嬌のあるかわいい顔をしています。
●ヤモリは毒を持たず、おとなしい性格
国内に生息するヤモリは毒を持っておらず、噛みついたり人に向かってきたりする心配はありません。とても警戒心が強く、危険を感じるとすぐに隙間に隠れてしまいます。
●驚異的な身体能力! 物理の力で垂直面もスイスイ
ヤモリは床や地面にいることは少なく、窓ガラスなどつるつるとした垂直面を器用に移動します。この特殊能力を可能にしているのが、足先の「趾下薄板(しかはくばん)」と呼ばれる器官です。この器官には超微細な剛毛が無数に生えており、毛の先に0.2〜0.5ミクロンの小さな突起がついています。
この突起の一つひとつに引き合う力(ファンデルワールス力)が生じ、この力を使って、壁や窓にくっつきます。
●ヤモリは生活サポートしてくれる「益獣」
ヤモリの好物はよく動く小さな虫です。厄介者のシロアリや小型のゴキブリなどを捕食してくれるため、私たちの生活を陰ながらサポートしてくれています。
私たちの生活を助けるハエトリグモ「アダンソンハエトリ」は害虫を駆除してくれる「益虫」であると以前にもご紹介しましたが、ヤモリは爬虫類なので「益獣」といわれています。
☆益虫「アダンソンハエトリ」についてはこちらの記事もご覧ください。
⇒家の中でぴょんぴょん跳ねる小さい蜘蛛。家蜘蛛(いえぐも)『アダンソンハエトリ』は衛生環境のリトマス試験紙?
マンションに出るヤモリ 水陸両用のイモリとの違い
ヤモリとイモリは、名前が似ていますが、全く異なる生きものです。日本でよく見られるヤモリはニホンヤモリ、イモリはアカハライモリです。
ニホンヤモリ | アカハライモリ | |
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分類 | 爬虫綱有鱗目トカゲ亜目ヤモリ科 | 両生綱有尾目イモリ科 |
生息地域 | 秋田県以南の本州・四国・九州・対馬など | 本州・四国・九州とその周辺の島々 |
生息場所 | 家屋の壁や天井、庭 | 水田、池、小川など |
活動時間 | 夜行性 | 夜行性(昼間も活動することがある) |
食性 | 光に集まる昆虫類を補食 | ミミズ、昆虫、オタマジャクシなどを補食 |
外見 | 灰褐色で鱗があり、周囲の色に合わせて体色を変化させる | 背面は黒色、腹面は鮮やかな赤色。 幼生は水中、手足が出ると陸に上がる |
産卵期 | 5〜7月 | 4〜7月 |
卵 | 硬く粘着性のある殻に覆われた卵を壁の隙間などに産みつける | ゼリー層に包まれた卵を水田や水草などに1個ずつ、最大40個ほど産みつける |
●見分け方・覚え方のポイント
場所: 「家守」であるヤモリは家に、「井戸を守る」イモリは水辺にいる
色: お腹が赤いのはイモリ
屋内にいるヤモリは「家」のヤ、水辺にいるイモリは「井戸」のイから始まる生きものと覚えておくと、混乱しないかもしれません。
臆病なヤモリに遭遇したら? 大声や虫取り網で対処しよう

ヤモリは害虫を食べてくれる「益獣」ですが、見た目が苦手な方や、卵を産みつけられるのが困る方もいるでしょう。
手で優しく捕まえて窓から外へ逃がすのがオーソドックスな方法ですが、触りたくない場合のために、4つの対策を紹介します。
●大声や物音を出す
ヤモリは臆病なので、大きな音に驚くと逃げていきます。後ろから声をかけたり、丸めた新聞紙などで床や壁を叩いて音を出し、外へ誘導しましょう。ただし、隙間に逃げこむのも上手なので、必ずしもうまくいくとは限りません。
●虫取り網で捕まえる
虫取り網を使うとヤモリに触らずに捕獲できます。音を立てないようにして静かに近づき、そっと網を被せましょう。柄の長い虫取り網なら、手の届かない場所にも対応できます。ヤモリも捕まえやすいでしょう。
●小さな容器で捕まえる
手の届く場所であれば、紙コップなどの容器を被せて捕獲する方法もあります。容器を被せた後に、下敷きなどを差しこんで閉じ込め、外へ運びましょう。
●侵入経路を塞ぐ
ヤモリは1cm程度の隙間から侵入します。換気口やエアコンホース、破れた網戸などを、コーキングやテープなどを使ってふさいでおきましょう。また、ヤモリの餌となるシロアリやゴキブリを駆除することも有効です。
ヤモリは家守。縁起がよい「益獣」とされる一方で、苦手な方もいます。侵入対策をし、家の中で出会ってしまったときの対応をシミュレーションしておけば安心です。
ヤモリは物理の力を使った特殊能力で、忍者のように壁や屋根を自由に動くことができる興味深い生きものです。もし見つけたときはその不思議な力に思いを馳せながらじっくり観察してみるのもおすすめです。
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■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネルギー)。国土交通省住宅の省エネ基準検討WG委員、日本産業規格JIS A 9521(2017)技術コンサル、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校の講師、日本建築ドローン協会(JADA)WG委員を歴任。
(2025年3月31日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。