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マンション大規模修繕工事を効率的に行うために日頃の点検は必要?
1. 日常的な点検の有無が大規模修繕工事に影響する?
大規模修繕工事は、今後の住みやすさや資産価値に関わってくるためマンションにとって非常に重要なイベントです。多額の費用がかかり、この費用には住民が毎月支払っている修繕積立金があてられます。限りある大切な積立金を使うのですから、効率よく工事を行い成功させたいですね。そのためには、不要な工事を避け、必要な箇所を適切に修繕しなければなりません。
マンション大規模修繕工事は、長期修繕計画にもとづき行われますが、実際にその時期にきたときに計画していた全ての場所の修繕が必要になるとは限りません。一方で、計画にはなかった箇所の修繕が必要になることもあります。大規模修繕工事の前には劣化診断を受けることが一般的で、多くのマンションでは日常の定期点検も行われていると思います。とはいえ、工事が必要な箇所を見極め、効率よく大規模修繕工事を行うには、それで十分でしょうか?
マンション大規模修繕工事は、長期修繕計画にもとづき行われますが、実際にその時期にきたときに計画していた全ての場所の修繕が必要になるとは限りません。一方で、計画にはなかった箇所の修繕が必要になることもあります。大規模修繕工事の前には劣化診断を受けることが一般的で、多くのマンションでは日常の定期点検も行われていると思います。とはいえ、工事が必要な箇所を見極め、効率よく大規模修繕工事を行うには、それで十分でしょうか?
2. 建物の劣化は毎日少しずつ進む
実は、建物の劣化はある日突然あらわれるわけではありません。日ごろから少しずつ進んでいき、これを放置していると、いつか致命的なトラブルにつながります。例えば、外壁のタイルが剥がれ落ちてしまったというケースがありますが、これもある日突然ばりばりと剥がれ始めて落ちるのではなく、付着力の弱い部分からだんだん剥がれた範囲が広がっていき、やがて重力に耐えられなくなって落下する、という順序で起きています。劣化の初期の段階で修繕するのか、それとも劣化が進んで大きなトラブルが起きたときに修繕するのかでは、かかる費用や工事の内容は大きく違ってきます。もちろん、傷みが小さなうちに修繕する方が良いのはいうまでもありません。また、こうした小さな積み重ねを効率的にまとめて修繕するのが、大規模修繕工事です。
そのためには、毎日の生活の中でマンションの劣化の兆候に気づくようにしたいものです。特に、専有部を通過しなければ見ることができないベランダは、お住まいの方には毎日目に触れる場所でも、定期点検の範囲には含まれていないことが多いでしょう。つまり、マンションの定期点検に加え日常的な気付きもとても重要になります。では、具体的にはどこをチェックすればいいのでしょうか。
そのためには、毎日の生活の中でマンションの劣化の兆候に気づくようにしたいものです。特に、専有部を通過しなければ見ることができないベランダは、お住まいの方には毎日目に触れる場所でも、定期点検の範囲には含まれていないことが多いでしょう。つまり、マンションの定期点検に加え日常的な気付きもとても重要になります。では、具体的にはどこをチェックすればいいのでしょうか。
3. 日頃からチェックしたいのはこんな場所
マンションの建物には劣化を放置すると致命的なトラブルになりやすい場所があります。ベランダの手すりや鉄骨階段などの鉄でできた「鉄部」と呼ばれるものや、防水の各部分、外壁、給排水設備などです。これらの部分は、適切な時期にメンテナンスや修繕ができるよう、ふだんから気を配っておきましょう。その具体的なチェックポイントは、次のようになります。また症状にあわせた対処法も一部ご紹介しておきます。
<鉄部>
まず、ご自宅マンションでどんな部分が鉄でできているのか確認しておくと良いですね。比較的新しいマンションでは金属部分は全て鉄製とは限らず、手すりや屋外照明器具にはアルミ製のものが多く使用されています。これらは鉄製のものとは異なり定期的な塗装は必要ありません。ただし、蓄積した汚れにより白い斑点が出たり、コンクリートに埋まった根本部分で不具合が生じたりする場合はあります。
マンションの屋上やベランダ、共用廊下の手すり、外階段(非常階段)、街灯の柱などの鉄製の部分に見られる症状には、次のようなものがあります。緊急性が高そうな場合には、管理会社や施工会社にメンテナンスや修繕を依頼しましょう。鉄は錆びることで劣化するので、それを守るための塗膜が劣化しているかどうかがポイントになります。
・塗装の変色、色あせ、光沢の劣化・チョーキング(塗装表面が粉状になる)
→ これだけでは緊急性はあまり高くありませんが、塗膜は劣化してきています。
・塗膜(塗装表面の膜)のふくれ
→ 何らかの理由で付着力が低下したり、裏側に水分が入り込んでしまっています。塗膜が既に剥がれ、その周辺も非常にはがれやすい状態なので、鉄を守るための処置を急いだ方が良いでしょう。
・塗装の割れ、はがれ
→ 鉄が露出し空気に触れてしまっています。雨が降ればすぐに錆びてしまうので、鉄を守るための処置を急いだ方が良いでしょう。
・サビ
→ すでに錆びてしまっています。これを放置すると錆びた部分が広がり、やがて穴が開いてしまいます。穴が開く前に早めに再塗装をしましょう。特に湿気のこもりやすい場所や海に近い場所では、錆びも早く進行します。もし穴がまだ小さければ、部分的な溶接補修と塗装で済むこともありますが、穴が大きい場合には補修用の金物製作やまるごと交換という工事となり、塗装と比較して高額な工事となります。
<防水各所>
屋上は開放されていないというマンションも多いと思いますが、各戸のベランダや屋根のないルーフバルコニーは、居住者の方だけが頻繁に目にする部分です。次のような症状があるか見てみましょう。
・防水面の破断
→屋上やルーフバルコニーは10年間、通常のベランダは5年間程度の漏水保証がされていることが多いので、表面の小さな傷程度であればすぐに漏水してしまうことはありません。しかし、どこかから水が入ってふくらんだり、誤って大きく傷つけてしまったりした場合、防水層が傷み雨水が浸入する恐れがありますので、早めに管理会社や施工会社に見てもらいましょう。
・防水面の雑草
→植物の種類にもよりますが、根が張ってしまうと防水層が傷みます。成長する前にすぐに抜きましょう。手で抜けないほどしっかりと生えてしまっていると、無理に抜くことで防水層を傷めたり水の浸入口を作ったりしてしまうかもしれないので、管理会社や施工会社に相談すると良いですね。また、手すりの外などの危険な箇所の処置は、管理会社にお願いしてください。
・排水口まわりのゴミ
→日常的に取り除きましょう。一般居住者が立ち入れないような部分では、年に2回程度、定期点検の時に清掃するといいですね。
<外壁>
外壁は建物を雨風から守る主要な部分の一つですので、ひび割れてしまうと雨水が屋内に入ってきてしまう恐れがあります。また、外壁仕上げ材はコンクリート躯体を保護するためのものですが、これが剥落すると居住者だけでなく第三者に危害を加えてしまう恐れもあります。高い部分は日常的には目視しかできませんが、次のような点を注意して見てみましょう。
・手摺支柱が埋まった部分のひび割れ
→手すりの内部などに水の経路があり、コンクリート内部の鉄筋が腐食して膨張している可能性があります。これが進行するとコンクリート片が落下することもありますので、早めに管理会社や施工会社に見てもらい、処置を行いましょう。
・手すり壁の最上部のひび割れ
→コンクリート製の手摺壁は、上部を平らにするために、後からモルタルで整形されていることが多いです。経年とともに、打設したコンクリートとモルタルの界面でひび割れが生じることがあります。これも進行すると落下の危険があるので、はっきりとしたひび割れに対しては、早めに処理を行った方がいいです。
・その他のひび割れ
→表面的なひび割れでは、すぐに問題になることはありませんが、これが広がっていく場合にはよくありません。特に居室のすぐ外のひび割れであれば、管理会社や施工会社に相談し、原因の究明と劣化の程度に応じた処置を行いましょう。
・外壁の塗膜の膨らみ
→塗膜の裏側に空気や雨水が入ってしまっています。すぐに問題になることはありませんが、膨れが大きくなって破裂し塗膜が破けると、下地のコンクリートが露出してしまいます。酸素にさらされ本来アルカリ性であるはずのコンクリートが徐々に中性化していき、内部の鉄筋が錆びやすくなってしまうので、管理会社や施工会社に相談し、早めに手を打ちましょう。
・外壁タイルの膨らみ
→日差しの方向によっては凸凹が気になるという程度では、機能上は全く問題ありません。タイルが何枚にもわたって連続して膨らんでいる、これがだんだん大きくなっているとなると、これは非常に問題です。やがてタイルが剥落し、直下の居住者はもちろんのこと、たまたま通りかかっただけの第三者に危害を加えてしまう恐れがあります。
<給排水設備>
給排水設備は、ポンプ部分や水槽部分などは点検できる場所にありますが、そこから伸びる給排水管は普段は見えません。そのため、気付かないうちに劣化が進行してしまう部分です。一般の居住者による日常的な点検は難しいからこそ、少しでも異変があれば管理会社に報告してください。また、次の点検や診断は欠かさないようにしましょう。全般的に専門性が高いので、年に1〜2回の点検は専門家に依頼してください。
・高架(高置)水槽・受水槽・ポンプ
→最低年1回は点検しましょう。水槽の容量によっては点検も義務となっています。水槽内の定期清掃、水槽内外の割れやサビの有無、架台などの割れやサビの有無をチェックします。水槽内にゴミや虫が入っていないか、防虫網は正常かなどの項目は毎月確認してください。
・給水管
→年に1回は専門家による調査・診断を行いましょう。
・排水管
→専門家による年1〜2回の点検を行い、最低年1回の洗浄も行いましょう。
<鉄部>
まず、ご自宅マンションでどんな部分が鉄でできているのか確認しておくと良いですね。比較的新しいマンションでは金属部分は全て鉄製とは限らず、手すりや屋外照明器具にはアルミ製のものが多く使用されています。これらは鉄製のものとは異なり定期的な塗装は必要ありません。ただし、蓄積した汚れにより白い斑点が出たり、コンクリートに埋まった根本部分で不具合が生じたりする場合はあります。
マンションの屋上やベランダ、共用廊下の手すり、外階段(非常階段)、街灯の柱などの鉄製の部分に見られる症状には、次のようなものがあります。緊急性が高そうな場合には、管理会社や施工会社にメンテナンスや修繕を依頼しましょう。鉄は錆びることで劣化するので、それを守るための塗膜が劣化しているかどうかがポイントになります。
・塗装の変色、色あせ、光沢の劣化・チョーキング(塗装表面が粉状になる)
→ これだけでは緊急性はあまり高くありませんが、塗膜は劣化してきています。
・塗膜(塗装表面の膜)のふくれ
→ 何らかの理由で付着力が低下したり、裏側に水分が入り込んでしまっています。塗膜が既に剥がれ、その周辺も非常にはがれやすい状態なので、鉄を守るための処置を急いだ方が良いでしょう。
・塗装の割れ、はがれ
→ 鉄が露出し空気に触れてしまっています。雨が降ればすぐに錆びてしまうので、鉄を守るための処置を急いだ方が良いでしょう。
・サビ
→ すでに錆びてしまっています。これを放置すると錆びた部分が広がり、やがて穴が開いてしまいます。穴が開く前に早めに再塗装をしましょう。特に湿気のこもりやすい場所や海に近い場所では、錆びも早く進行します。もし穴がまだ小さければ、部分的な溶接補修と塗装で済むこともありますが、穴が大きい場合には補修用の金物製作やまるごと交換という工事となり、塗装と比較して高額な工事となります。
<防水各所>
屋上は開放されていないというマンションも多いと思いますが、各戸のベランダや屋根のないルーフバルコニーは、居住者の方だけが頻繁に目にする部分です。次のような症状があるか見てみましょう。
・防水面の破断
→屋上やルーフバルコニーは10年間、通常のベランダは5年間程度の漏水保証がされていることが多いので、表面の小さな傷程度であればすぐに漏水してしまうことはありません。しかし、どこかから水が入ってふくらんだり、誤って大きく傷つけてしまったりした場合、防水層が傷み雨水が浸入する恐れがありますので、早めに管理会社や施工会社に見てもらいましょう。
・防水面の雑草
→植物の種類にもよりますが、根が張ってしまうと防水層が傷みます。成長する前にすぐに抜きましょう。手で抜けないほどしっかりと生えてしまっていると、無理に抜くことで防水層を傷めたり水の浸入口を作ったりしてしまうかもしれないので、管理会社や施工会社に相談すると良いですね。また、手すりの外などの危険な箇所の処置は、管理会社にお願いしてください。
・排水口まわりのゴミ
→日常的に取り除きましょう。一般居住者が立ち入れないような部分では、年に2回程度、定期点検の時に清掃するといいですね。
<外壁>
外壁は建物を雨風から守る主要な部分の一つですので、ひび割れてしまうと雨水が屋内に入ってきてしまう恐れがあります。また、外壁仕上げ材はコンクリート躯体を保護するためのものですが、これが剥落すると居住者だけでなく第三者に危害を加えてしまう恐れもあります。高い部分は日常的には目視しかできませんが、次のような点を注意して見てみましょう。
・手摺支柱が埋まった部分のひび割れ
→手すりの内部などに水の経路があり、コンクリート内部の鉄筋が腐食して膨張している可能性があります。これが進行するとコンクリート片が落下することもありますので、早めに管理会社や施工会社に見てもらい、処置を行いましょう。
・手すり壁の最上部のひび割れ
→コンクリート製の手摺壁は、上部を平らにするために、後からモルタルで整形されていることが多いです。経年とともに、打設したコンクリートとモルタルの界面でひび割れが生じることがあります。これも進行すると落下の危険があるので、はっきりとしたひび割れに対しては、早めに処理を行った方がいいです。
・その他のひび割れ
→表面的なひび割れでは、すぐに問題になることはありませんが、これが広がっていく場合にはよくありません。特に居室のすぐ外のひび割れであれば、管理会社や施工会社に相談し、原因の究明と劣化の程度に応じた処置を行いましょう。
・外壁の塗膜の膨らみ
→塗膜の裏側に空気や雨水が入ってしまっています。すぐに問題になることはありませんが、膨れが大きくなって破裂し塗膜が破けると、下地のコンクリートが露出してしまいます。酸素にさらされ本来アルカリ性であるはずのコンクリートが徐々に中性化していき、内部の鉄筋が錆びやすくなってしまうので、管理会社や施工会社に相談し、早めに手を打ちましょう。
・外壁タイルの膨らみ
→日差しの方向によっては凸凹が気になるという程度では、機能上は全く問題ありません。タイルが何枚にもわたって連続して膨らんでいる、これがだんだん大きくなっているとなると、これは非常に問題です。やがてタイルが剥落し、直下の居住者はもちろんのこと、たまたま通りかかっただけの第三者に危害を加えてしまう恐れがあります。
<給排水設備>
給排水設備は、ポンプ部分や水槽部分などは点検できる場所にありますが、そこから伸びる給排水管は普段は見えません。そのため、気付かないうちに劣化が進行してしまう部分です。一般の居住者による日常的な点検は難しいからこそ、少しでも異変があれば管理会社に報告してください。また、次の点検や診断は欠かさないようにしましょう。全般的に専門性が高いので、年に1〜2回の点検は専門家に依頼してください。
・高架(高置)水槽・受水槽・ポンプ
→最低年1回は点検しましょう。水槽の容量によっては点検も義務となっています。水槽内の定期清掃、水槽内外の割れやサビの有無、架台などの割れやサビの有無をチェックします。水槽内にゴミや虫が入っていないか、防虫網は正常かなどの項目は毎月確認してください。
・給水管
→年に1回は専門家による調査・診断を行いましょう。
・排水管
→専門家による年1〜2回の点検を行い、最低年1回の洗浄も行いましょう。
4. 住民みんながマンションの状態に関心を
専門家に依頼するものもありますが、一般居住者の声で気付けるポイントも多くあります。マンションは住民みんなの大切な資産ですので、住民一人ひとりがマンションの状態に関心を持てるよう、日頃から住民間のコミュニケーションを図っておくことも大切です。また、建物の維持管理は管理組合の理事(役員)らの協議により管理会社に委託されているマンションが大半かと思いますが、管理会社には重視したいチェックポイントを共有し、何かあればすぐに報告してもらえる体制をつくっておきましょう。管理組合理事だけでなく、その他の居住者も管理会社も協力しながら、マンションを良い状態に保っていけると良いですね。
《この記事のライター》
大塚 麻里絵
建装工業株式会社 MR業務推進部所属
埼玉県出身 東京理科大学理工学部建築学科卒業
一級建築施工管理技士を有し、大規模修繕工事現場にも従事した経験のある女性技術者・ライター
(2020年2月28日記事更新)
★詳しくはこちらをご参照ください。
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