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マンション老朽化で修繕積立金の不足も? 高経年マンションの備えとは

マンション 老朽化

マンションも高経年なものになると、そこに住んでいる人も高齢化し、代替わりを行う家庭も増えていきます。相続して住み続ける、リフォームして売買するなど、代替わりをスムーズに進めることは、古いマンションが抱える大きな課題です。高経年でも魅力的なマンションを目指すには、老朽化によるデメリットを減らすことが必要です。マンションの高経年化に当たって備えるべきポイントを考えます。

目次
1. 代替わりに空き家、高経年化が生むマンション管理の課題とは
2. 築年数を重ねることで発生するマンションの不具合や管理上の問題とその対処
3. 古くても魅力的なマンションに 管理組合の改善とマネジメントで高経年に備える

代替わりに空き家、高経年が生むマンション管理の課題とは

マンション 老朽化

マンションの高経年化で起こる問題には、建物に起こる問題や人に起こる問題など、様々なものがあります。具体的にはどんな問題があるのでしょうか。

・高齢化が進む住民や管理組合の役員
マンションの高齢化が進行すると、住民も管理組合の役員も高齢化していきます。そうすると若い世代が少なくなる分、管理組合の理事会役員も選定が難しくなります。その結果、さらなる高齢化が進んだことによって小回りも利かなくなった管理組合は、従来のようにきめの細かいマンション管理ができなくなるかも知れません。

・空き家化、区分所有者が住んでいない賃貸化の進行
古いマンションには空き家や区分所有者の住んでいない部屋が発生します。
高齢になった区分所有者が施設に入居する、区分所有者が亡くなって相続者が賃貸にするなど、様々な事情による空き家化・賃貸化も増えていきます。こういった状況下では理想的な管理や防犯も十分にできなくなっていき、やがてはマンション全体の安全面にも深くかかわってくるのです。

※マンションの空き家問題については下記記事も参照ください
マンションの空き家問題 管理組合はどう対応すればいい?

・区分所有者の所在不明や連絡先不通
高経年マンションでは区分所有者が所在不明や連絡先不通となることもあります。区分所有者の転居や死亡による「所在等不明住戸」で連絡先不通の割合が増えると、総会で決議ができなくなるためマンションの管理にも支障が出るのです。

築年数を重ねることで発生するマンションの不具合や管理上の問題とその対処

マンションの高経年で発生する問題には、建物と人の「ふたつの老い」がかかわっています。
マンションは築年数を重ねていくと建物や設備に様々な不具合や問題が起こります。修繕積立金はこれらを手当てするためのものですが、高経年マンションでは修繕と資金においても大きな問題が存在します。

建物に現れる問題としてはマンションの構造体である鉄筋やコンクリートの老朽化、給排水管や給水機器、電気関係の定期的なメンテナンスなど、様々なものが修繕積立金を資金とした大規模修繕などの定期的な修繕で改善されます。
エレベーターや給排水管などのように高経年でリニューアルが必要なものは、短期的に行われる小規模な修繕や大規模修繕によって残り少なくなった積立金で補うため、さらに大きな負担となるでしょう。

マンションの竣工当時に計画した修理積立金が足りなくなってしまう理由のひとつは、予想もしていなかった様々な経年劣化が次々と発生してしまうことです。そのため、長期修繕計画や修繕積立金額の見直しはしっかりと行っておいたほうが良いでしょう。

また、管理組合がマンションの管理費や積立金を徴収するのは区分所有者からですが、それらの滞納は高経年マンションほど多くなる傾向があります。
区分所有者が高齢化で年金生活者になることや、孤独死する人の可能性も考えないといけません。
マンションが自治会に入っていたり、自治会を設立したりしている場合は、自治会による高齢者の見守りなども対策のひとつとなります。また、定期的に緊急連絡先も更新しておきましょう。

※マンションの管理費等の滞納問題については下記記事も参照ください
マンション管理費等の滞納問題 マンション管理組合は早めの取り組みを

古くても魅力的なマンションに 管理組合の改善とマネジメントで高経年に備える

マンション 老朽化

高経年のマンションではリフォームの需要も高まってきますが、とりわけ床下の配管には目を向けないといけません。高経年マンションの配管は構造躯体コンクリートで作られた「床スラブ」の下にあることが多く、日常生活の中では確認することができません。そのため、床下配管をしっかりと管理しているマンションでは必然的に建物も長持ちするといえるでしょう。しかし、配管は共用部分と専有部分の境界にもあるので、修繕のタイミングをはかるのは決して簡単なことではありません。そのため、共用部分の設備と構造上一体化した箇所については、修繕積立金から拠出することも検討すると良いでしょう。

※マンションの配管の境界については下記の記事もご覧ください
どうなる修理費の負担。マンションにおける責任分界点とは?

さらに、高経年への備えとしてハード面の修繕や改良と同様に大切なのが、長期的な視点を持って行う運営です。そのため、管理組合の運営や長期修繕計画には、外部の専門家を活用することもひとつの選択肢となるでしょう。

専門家の知識を借りながら、空き住戸の対策やバリアフリー化、省エネルギー化などを行い、魅力ある建物や地域にすることでマンションの価値を保ち、向上させることも不可能なことではありません。

マンション暮らしを続けていると、住み始めた頃には予想していなかった建物の高経年による問題解決の難しさを感じるものです。同じマンションに住む者同士のつながりが希薄になってきていると言われている昨今、建物の修繕だけではない区分所有者のつながりを、互いが意識することで強く大きなものにしていくことも大切です。
高経年が進む中で将来的に必要となる備えをあらかじめ把握しておくことにより、住民を含む多くの人が魅了されるマンションを維持し続けたいものですね。

■あわせてお読みください。
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■この記事のライター
□吉田 秀樹
建装工業株式会社 MR業務推進部 統括部長
愛知県出身 職能能力開発総合大学校(当時:相模原市)卒業
マンション管理士・一級建築施工管理技士・マンション維持修繕技術者を有し、大規模修繕工事の営業に従事した経験者

(2024年10月28日新規掲載)
*本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。

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