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ベランダで家庭菜園にチャレンジ! 冬に植える野菜編 〜マンションで楽しむガーデニングシリーズ〜
マンションでも楽しめるベランダガーデニングを紹介していくシリーズです。今回は、マンションにおけるベランダ菜園で初心者でも簡単にできる「冬越し」の手法や、12月からでも植えられるおすすめの野菜を紹介します。
☆マンションでベランダガーデニングをするときの注意点
・マンションのベランダはあくまでも「共用部」です。いくつか注意点がありますのでご留意ください。
・避難経路として支障がないように配慮する。
・大規模修繕工事の際は、移動等により撤去する。
・その他マンション規約に定められている事項に従う。 等
※詳しくは下記の記事を参照
⇒「ベランダガーデニングをマンションで楽しむ秘訣と諸注意」
目次
1. 寒くても間に合う! 冬でも楽しめるベランダ菜園
2. 種まきの適期じゃなくても発芽する可能性アリ! ポイントは「発芽適温」
3. 冬でも育てられる野菜10選
寒くても間に合う! 冬でも楽しめるベランダ菜園
今年は残暑が長引いたと思ったら、急に冷え込んできました。秋植えの野菜の栽培を逃してしまったという方もいらっしゃるかもしれません。気が付けば冬になってしまいましたが、野菜の種まきや植え付けはまだ間に合います。これからの時期にベランダ菜園で育てられる野菜もあります。
冬に育てる野菜は寒さで甘みが増すのが特徴で、生育のために過剰に暖かくするのは、野菜にダメージを与えてしまう心配もあります。一方、若い苗は急激な寒さで枯れてしまうことがありますが、室内管理や便利なアイテムを活用して冬を乗り越えましょう。
・種苗トレー
種まきトレー、種苗コンテナ、セルトレーなどと呼ばれることもあります。外気温が低くて種の発芽に適さない場合は、ある程度育つまで種苗トレーを使って室内で管理することをおすすめします。
・穴あきマルチシート
土の表面を覆う保温シートは、地温を高めて根張り※を助けるとともに雑草対策としても機能します。等間隔に穴が開いているため、野菜の苗の植え付けに適しています。
※根が土中に張り広がること
・寒冷紗
霜よけのために使用する網状の布で、アーチ型の支柱を立ててトンネル状に被せます。一見すると寒そうに思えるかもしれませんが、植物にとっては適切です。
・発泡スチロール箱プランター
断熱効果があるため、暑さや寒さに弱い植物の成長を妨げません。園芸用は高価なので、サイズが合えばホームセンターの野菜用ボックスやトロ箱を利用してもよいでしょう。
・簡易ハウス
ワイヤーラックにビニールをかぶせたコンパクトなものが市販されています。2〜3段に区切られているものならベランダ菜園でも省スペースで栽培できます。本格的に育てたい場合には、ハウス用の加温器具を検討してみてはいかがでしょう。
ガーデニングの基本的な用語はこちらもご覧ください。
⇒「一目でわかる!ガーデニング用語集(初級編・その1) 〜マンションで楽しめるベランダ・室内ガーデニング〜」
⇒「一目でわかる!ガーデニング用語集(初級編・その2) 〜マンションで楽しめるベランダ・室内ガーデニング〜」
種まきの適期じゃなくても発芽する可能性アリ! ポイントは「発芽適温」
市販の種のパッケージには、「寒冷地、中間地、暖地」と地域の気候に合わせた数パターンの種まきに適した時期が記載されていることがあります。その期間内に種をまくのをおすすめしますが、多少遅れても発芽する可能性はあります。昼夜の寒暖差が10度以上になると発芽率が下がるため、注意が必要です。
野菜によって「発芽適温」は異なるため、朝晩の外気温が低い場合は種苗トレーに種をまいて室内で管理しましょう。苗がある程度育ったらプランターに移植し、外気温に慣れさせながら寒さ対策を施しましょう。
ベランダに電気コンセントがあれば、簡易ハウスを使ってより本格的な加温栽培も可能です。
冬でも育てられる野菜10選
冬でも育てやすい野菜を選びましょう。種は室内で発芽させ、苗は暖房を使わない玄関などで徐々に外気温に慣らし、本葉が出てきたら適宜間引きします。
冬の葉物野菜は、冬至以降に日照時間が長くなると、花を咲かせる茎がのびてくる「トウ立ち」が起こりやすくなります。「トウ立ち」すると葉や茎が硬くなるため、大きくなる前に収穫して柔らかい葉を食べてください。
【トウ立ちして花をつけた、ほうれん草】
●ほうれん草
カロチンや鉄分が摂取できる、健康野菜です。
・種まき
適温は15〜20度ですが、5度くらいまで発芽可能です。種子の殻が硬く、水分不足に陥りやすいため、発芽するまでは特に注意が必要です。
・収穫時期
冬は発芽から40〜60日後です。間引きした苗も食べられます。
・栽培のコツ
冬はトウ立ちしにくい西洋種が適しています。1〜2月はトンネル支柱で寒冷紗を使用します。暑さに弱く、25度以上になると蒸れて根腐れなどの病気が発生することがあるため、防寒はほどほどにします。
●小松菜
東京都江戸川区にある小松川で栽培されていた伝統野菜です。
・種まき
発芽適温は15〜35度ですが、最低6度あれば発芽可能です。
・収穫時期
60〜80日後。間引きした苗も食べられます。
・栽培のコツ
外気温が低い冬はトウ立ちしやすいため、簡易ハウスやトンネル状に防寒用資材をかぶせるなどの防寒対策を施し、15度以上で管理します。大きくなると葉が硬くなるので、やや株間を狭くするとよいでしょう。カビによって葉が斑点状に白くなる「白さび病」が発生したら、株を抜いて処分しないと被害が広がります。
●ラディッシュ
20日ほどで収穫できるため「ハツカダイコン」という別名があり、20日ほどで収穫することができます。
・種まき
発芽適温は15〜25度ですが、最低10度程度で発芽可能です。発芽までには約5日かかります。
・収穫時期
20〜40日後。間引いた苗はその都度食べられます。
・栽培のコツ
根が1本、下にまっすぐ伸びるためさわると傷つきやすいです。植え替えを避けるため直接プランターに種をまき、真冬は発芽するまで室内で管理しましょう。大きくなると実がスカスカの空洞になることがあるため、直径2〜3cm程度になったら早めに収穫するとよいでしょう。
●ツケナ
ツケナは昔から漬物に使われる伝統的な葉物野菜です。
・種まき
発芽適温は20度前後で、最低6度で発芽します。発芽後は14度程度の環境でよく育ちます。
・収穫時期
発芽から3か月後、25cm程度になったころが目安です。間引いた苗も食べられます。
・栽培のコツ
11月以降は、トンネル状に防寒用資材をかぶせる「トンネル栽培」がおすすめです。ツケナはアブラナ科の野菜のなかでも葉が重なって球状になる「結球」が起こらないため、早めに収穫すると柔らかく、漬物や炒め物、おひたしに向いています。
●青梗菜(チンゲンサイ)
中華料理によく使われる葉物野菜です。
・種まき
発芽適温は20〜25度ですが、最低5度で発芽し、12度以上の環境で育てましょう。
・収穫時期
冬は60〜80日で収穫。間引いた苗も食べられます。
・栽培のコツ
暑さに弱く、冬の寒さには強い。関東以西では冬でも発芽可能です。11月以降は寒冷紗をかけたトンネル栽培がおすすめです。トウ立ちしないように注意し、軸の部分がふくらんできたら早めに収穫するとおいしく食べられます。
●春菊
鍋物によく使われ、独特の香りがする野菜です。
・種まき
10度以下では発芽しないので、室内で発芽させ、本葉が数枚出れば、冬でも屋外で栽培が可能です。
・収穫時期
冬はトウ立ちする前に収穫します。
・栽培のコツ
種まきはやや難しいですが、一度育てば長く収穫できます。発芽には光が必要なので、種子の覆土は薄くし、霧吹きで水やりします。種苗トレーからプランターに植え付ける際には、2週間ほど前から土に苦土石灰を混ぜて酸度を調整した用土を用意しておきましょう。
●アスパラガス
栄養ドリンクなどに使わるアスパラギン酸というアミノ酸を多く含む野菜です。
・植え付け
10月中旬〜5月中旬が適期。冬に地上部分の葉が落ちた後の「素堀株」と呼ばれる苗を植えると、春に芽が出ます。
・収穫時期
通常は植え付けから2年後の5〜8月ですが、大株なら翌年から収穫可能です。
・栽培のコツ
ユリ科の多年生植物で10年ほど収穫できます。深い鉢に植えて、成長したら支柱を立てるとよいでしょう。葉の色が悪くなった時や収穫後、冬の落葉後、春の芽出し時にこまめに追肥すると、順調に育ちます。
●ミニ白菜
煮物、炒め物、漬物に利用でき、特に冬においしく食べられる野菜です。
・植え付け
苗を購入したらすぐに植え付けます。種から育てる場合、4度以上で発芽しますが、15度以下になると結球しにくくなることがあります。本葉が4〜5枚になったらプランターに植え替えます。
・収穫時期
苗から育てる場合は玉の直径が15cmほどになったら、種から育てる場合は60日後ぐらいが収穫時期です。
・栽培のコツ
低温でも結球しやすい極早生〜早生種を使用します。簡易ハウスやトンネル状の防寒用資材をかぶせて15度に保温して育てます。結球に失敗した場合はそのまま育てて、菜の花が咲いたら収穫します。秋田県では「ふくたち」という名で販売され、おひたしや炒め物として食べられています。
●玉ネギ
黄玉・赤玉・白玉と種類が豊富でどんな料理にも合う万能野菜です。
・植え付け
10〜12月が適期。初心者は苗から育てるのがおすすめです。酸性を嫌うため、苦土石灰を混ぜた用土に球根が少し見えるくらいに浅く植えます。
・収穫時期
春から初夏にかけて、地上部分が8割以上枯れたら収穫します。生食用は、葉が2割枯れたタイミングで早めに収穫します。
・栽培のコツ
苗を購入する際は、太すぎず細すぎない、株元が鉛筆くらいの太さの苗を選ぶとよいでしょう。真冬に霜柱で玉ネギが浮いてきたら、手で押さえて土に戻します。葉の色が悪くなったら追肥しましょう。葉が枯れても根が張っていれば、春にはまた新葉が生えてきます。
●あしたば
収穫しても明日には新しい葉が出てくることから「あしたば」と名付けられた、成長の速い野菜です。
・植え付け
種まきは12月に行います。大株の苗を購入したら、直径30cmで深さのある鉢に1株、やや深めに植え付けます。
・収穫時期
葉が5〜6枚出てきたら、2枚以上残して随時収穫します。若葉が生える2〜6月頃、10〜11月頃が収穫に適しています。
・栽培のコツ
生命力が強く初心者にも向いています。株元をビニールなどで覆う「マルチ」で保温し、真冬は寒冷紗をかぶせます。暑さに弱いため、夏場は日陰に移動させます。天ぷら、おひたし、サラダ、炒め物などいろいろな料理に使えます。
ベランダ菜園には、日照や風通し、スペースの確保などの難点がありますが、マンションのベランダならではの利点もあります。
マンションのベランダは部屋の南側にあることが多く、北風を受けにくいため、冬でも野菜を育てやすい環境になります。
木枯らしや雪などの荒天時も、マンションのベランダならプランターをさっと室内に取り込むことができるので、管理が容易です。
工夫次第で冬でも楽しめるマンションのベランダ菜園に、挑戦してみてください。
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■この記事のライター
□熊谷皇(くまがいこう)
国立大学法人 鹿児島大学院工学研究科建築学専攻終了。専門は建築環境工学(温熱環境、省エネルギー)。国土交通省住宅の省エネ基準検討WG委員、日本産業規格JIS A 9521(2017)技術コンサル、建築環境省エネルギー機構(IBEC)・日本建築センター(BCJ)・職業能力開発総合大学校の講師を歴任。日本建築ドローン協会(JADA)WG委員。
(2024年12月2日新規掲載)
※本記事は掲載時の内容であり、現在とは内容が異なる場合ありますので予めご了承下さい。